右:認定特定非営利活動法人ReBit 事務局長兼キャリア事業部シニアマネージャー 中島 潤氏
コロナ禍が過ぎ、「新しい働き方」を模索する人が増えている。そんな多様な働き方を企業はどう支援すべきか。特に中小企業の現場では、業務を効率化し、働きやすい環境を構築しなければ人材獲得すらままならないという現状がある。今回、デジタル化ツールをうまく活用し、場所に縛られない新しい働き方を実践する認定NPO法人「ReBit(リビット)」の中島潤氏と、アドビのマーケティング本部マーケティングマネージャーである島田昌隆氏に、新しい働き方の実態や、それを実現する業務効率化について考えを語ってもらった。
企業からの引き合いも増加中。LGBTQを支援するNPO法人の活動とは
島田 まずは、ReBitさんの活動など概要を教えていただけますでしょうか。
中島 ReBitは、LGBTQ(*1)の子どもと若者の課題を解決することを目標として活動しています。2009年に早稲田大学の学生団体としてスタートし、14年にNPO法人となりました。団体名は、少しずつの「Bit」と、繰り返しの「Re」をくっつけた造語で、「少しずつを何度でも繰り返すことで、社会をより良い方向に進めたい」という願いが込められています。
大学在学中、国内外のマイノリティに関する課題について学び、多様な性に関する発信活動を開始。学部時代に学生団体であったReBitに参画し、卒業後は、トランスジェンダーであることを明かして民間企業に就職。営業職や販売管理のマネジメント業務に従事。その後、大学院にて社会学を専攻、修士(社会学)。現在は、「LGBTQも含めた誰もが、ありのままで大人になり、自分らしく働くことを実現する」という目標のもと、教材の監修、企業・行政等への研修やコンサルテーション、就活生・就労者への支援を行う。
具体的な事業領域は、教育、キャリア、福祉の三つ。教育事業では、学校・行政向けの出張授業や研修の実施、先生方が使う教材の作成、LGBTQ課題に関する調査、書籍・広報物の監修などを行っています。キャリア事業では、LGBTQのキャリア支援や、企業・行政向けのLGBTQまたはダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に関するコンサルティングや研修などを行っています。福祉事業では、LGBTQも安心して使える福祉サービスのモデル構築を目指して、精神・発達障害のある方への就労支援を行っています。
島田 アドビでも「Adobe for All」をテーマにD&I経営を進めています。その柱の一つが採用です。性別、民族、バックグラウンドにおいて多様な人材を採用し、多様性に富んだ環境づくりにコミットしており、多様な人が働きやすい職場環境づくりは、多くの企業にとって注目すべき経営課題となっていますね。
中島 はい。職場におけるLGBTQへの取り組みを評価・表彰する「PRIDE指標」(*2)の受賞企業・団体は、この指標が始まった16年には79社でしたが、22年には総計842社に増え、同年のベストプラクティスには、神戸製鋼所、トヨタ自動車、PwC Japanグループの3社が選出されるなど、企業の関心の高まりがうかがえます。
次ページからは、アドビが行った「未来の働き方に関するグローバル調査」の結果と、ReBitが行ったアンケート調査「Z世代のダイバーシティ&インクルージョンと就職・就労について」の結果を紹介しながら、中小企業こそ文書業務の改善をすべき理由と業務改善のヒントなども提示する。
*1 LGBTQ:レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)、クエスチョニング(Questioning)の頭文字を取った言葉で、性的マイノリティー(性的少数者)を表す総称の一つ。
*2「PRIDE指標」:任意団体であるwork with Prideが2016年に日本初の職場におけるLGBTQなどのセクシュアル・マイノリティーへの取り組みの評価指標として策定したもの。