ワーク・ライフ・バランスが仕事選びの基準に
島田 アドビが行った「未来の働き方に関するグローバル調査」では、効率化したいタスクの筆頭に「紙文書の作成、確認作業」が挙げられています(図1)。
中島 ああ、それは共感しますね。
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島田 さらに現状のリモートワークでは、3人に1人が文書業務や署名作業が難しいと思っており、またマネージャーの2人に1人、従業員の5人に2人は、リモートワーク下で時間の余裕がなくなったと感じています。また、その一方で、給料と職務内容が同じであれば、日本でも従業員の65%がワーク・ライフ・バランスの向上などを要因に転職を検討することが分かりました(図2)。
つまり、文書業務をはじめとした仕事の業務効率の改善をして、リモートワークを含めた多様な働き方ができる環境を実現すれば、人材獲得のアドバンテージにもなるということだと理解しています。
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中島 そうかもしれません。ReBitがZ世代(1996~2012年に生まれた10代後半から20代の若者)向けに行ったアンケート調査でも、「職場においてD&Iが推進されていることは、職業を選択する際や、働き続ける上で重要な要素だと思いますか?」という質問に、97.1%が「そう思う/ややそう思う」と回答していました。またその理由として、「D&Iを推進している職場は、従業員を大事にしてくれる職場だと思うから」が69.7%に上りました。D&Iはマイノリティーのためのものではなく、多様な人がフルパフォーマンスを発揮するために必要な概念なのだと思います。
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例えばリモートワークや時短勤務など、自由な働き方を支援する制度を導入すると、これまでその企業で働けなかった人も働ける可能性が出てきます。そんな多様な人が働きやすい、多様な働き方をサポートすることも、採用難のこの世の中での人材獲得のアドバンテージだと考えます。
フルリモートワークの職場ならではの課題
島田 ReBitさんでは、最近文書業務や契約業務について課題があったそうですが、具体的にどのようなものでしたか。
中島 一つは、契約書に関連する業務の負担です。ReBitではコロナ禍前から、オンラインツールを積極的に取り入れてリモートワークを実践していました。各メンバーが好きな場所で働けた方が効率的という考えがあったからです。そのため事務所は東京にありますが、メンバーは全国に在住しています。出勤を原則としないことで、多様な人が関われる組織になっています。
しかし、出勤を前提としないことによる不都合もありました。お客さまやメンバーとの紙の書類のやりとりがしにくいという問題です。例えば、契約書が事務所に届いたら、出勤している人か、それがいない場合は誰かが事務所に行って、その担当に書類を転送するか、どこかで待ち合わせて受け渡してもらう必要があります。さらに契約書となると、法人の印鑑は今、誰が持っているのか、必要な製本テープやレターパックといった備品も個人で購入するのか、それらの管理はどうするのかなども面倒な部分でした。特に「法人印は今誰が持っていて、次はいつの事務所出勤だっけ?」などを考えなくてはいけないという、自分の脳のリソースを有意義ではないことに使わざるを得ない感覚が嫌でした。
島田 全員がリモートワークだと、紙でのやりとりはいろいろと大変そうですね。
中島 はい、さらに広報物や出版物を監修する際の校正作業も悩みの一つでした。以前までは、お客さまからPDFデータで原稿を受け取ったら、校正に関わるメンバー分のプリントアウトをして、そこに赤ペンでコメントを入れていました。そして最終的には、誰かが全員分のコメントをまとめて清書し、再びPDF化してお客さまに送るというプロセスになっていて、これが非常に手間でした。
あるときからは、PDFデータの全ページを画像キャプチャして、その画像をGoogleスライドに貼り付け、各自がGoogleスライド上でコメントを書き入れる方法を取り入れました。これは共同作業ができる便利さはあるのですが、画像キャプチャしたり最後に清書したりする工程がやはり負担になります。
これ以外にも色々な課題があったのですが、特にここまでいろいろ話をしたような課題を解決する方法として、選んだのが「Adobe Acrobat Pro」でした。