船舶輸送の実績を生かし、CCUSを支えていく

「大陽日酸も、お客さまへの製品・ソリューション提供によって削減されるGHGの量を自社のGHG削減量より上回らせるという目標を掲げています。当社独自の製品やソリューションを開発して提供するため、21年10月には『カーボンニュートラルビジネスプロジェクト』(以下、CNBP)を立ち上げました」(藤田リーダー)

 藤田リーダーはこのプロジェクトで、CCUS(CO2の回収・利用・貯留)の実現などに貢献する製品やソリューションを提案するチームを率いている。

「大陽日酸は、産業ガスの一つである炭酸ガスを効率よく回収し、輸送するために液化する技術などを長年にわたって磨き上げてきました。その知見やノウハウを活用することで、CCUSの全ての工程を支援できるのが、当社の何よりの強みだと自負しています」と藤田リーダー。

 CCUSは、経済産業省が国のカーボンニュートラル目標を達成させる“切り札”として取り組む巨大プロジェクトだ。

産業ガスで培った技術力と広範なネットワークで、日本企業の脱炭素化を支援大陽日酸にはCO2の回収、液化、輸送、利用に関わってきた豊富な実績があり、その知見やノウハウはCCUSにも転用できる

 CO2を排出する発電所や製鉄所、工場などと、製品作りなどにCO2を利用する企業をマッチングし、回収し、液化されたCO2を利用先に送るネットワークを形成。利用し切れない分は、CO2を通さない地中深くに貯留するというのが経産省の描く構想である。

 日本全体のCO2排出量は年間約12億トンだが、そのうち1億から2億トンをCCUSで減らすことを目指している。

 CCUSのネットワークを形成するには、回収先で大量に液化したCO2をどうやって利用先に運ぶのかという物理的な課題もある。効率よく大量輸送するには船で運ぶのが望ましいが、現状、日本ではタンクローリーによる輸送がほとんどだ。

「その点、欧州で産業ガス事業を展開する日本酸素ホールディングスのグループ会社は、船舶による液化炭酸ガス輸送の実績があり、そのノウハウを共有することで国内における船舶輸送も支援できるようになります。回収や液化の技術を提供するだけでなく、輸送面でもCCUSの実現に貢献できるのです」(藤田リーダー)

 また、長年産業ガス事業に携わってきた大陽日酸は、あらゆる産業と深い関わりを持っている。その広範なネットワークを生かして、CO2の回収先と利用先を適切にマッチングできるのも同社の強みといえよう。