帳票業務を一つのプラットフォームに集約して帳票DXを加速

 帳票業務における、こうした“普遍的な課題”に向き合うのが、ウイングアーク1stが展開する電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent(インボイスエージェント)」である。

 invoiceAgentの最大の特徴は、配信・受領・保管の3領域を包含する点だ。配信や受領などに特化した個別ツールの場合、ツール間のデータ移行や保管に人間が介在せざるを得なくなり、効率面でもセキュリティー面でも課題が出てくる。「invoiceAgent」では、取引先ごとに異なる形式の帳票を、一つのプラットフォームに集約し、そのままデジタル化できる。正確かつ安全に管理でき、業務効率化による企業間の商取引の加速へとつなげられるのだ(図1参照)。

インボイス制度施行間近! 効率化だけでなく競争力と企業価値を高める帳票DXへ【図1】 invoiceAgentは帳票の「受信」「保管/データ化」「配信」を一元管理することができる。後述するように、同時に「受信だけに用いる」といった利用の仕方も可能だ
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「『SVF(エス・ブイ・エフ)』(※1)をはじめとする当社の帳票ソリューション製品は、国内シェアナンバーワン(※2)です。SVFでは主に帳票の設計・出力を中心にサービス展開をしてきましたが、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度をはじめとした法対応で、配信・受領・保管の運用ニーズが一気に膨らみました。企業内では、全社で配信や受領まで機能を広げて一つのプラットフォームで完結させよう、という考えが徐々に広がっています。このニーズに応えられるのが『invoiceAgent』なのです」(新井副事業部長)

※1 ウイングアーク1stの総合帳票基盤ソリューション。日本固有の請求書や公的証明書といった複雑な帳票フォームを専用のGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)で簡単に設計し、上位アプリケーションと連携し、安定的な業務運用(大量出力、多様な出力、デジタル化)を実現する。
※2 出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所「帳票設計・運用製品の競合調査2022年度版」(帳票運用製品)https://www.wingarc.com/product/svf/

スモールスタートと拡張性で各社の課題に寄り添う

 invoiceAgentのもう一つの大きな特徴といえるのが、デジタルインボイス「Peppol(ペポル)」への対応だ。Peppol(Pan European Public Procurement Online)とは、電子文書化した請求書をネットワーク上でやりとりするための世界標準規格(※3)。文書の仕様や、運用ルール、ネットワークに関する世界的なルールといえる。インボイス制度の開始に伴い、少しずつ認知が広がっている。

※3 日本においては、デジタル庁とデジタルインボイス推進協議会(EIPA)が官民連携の下、日本版Peppol「JP PINT(ジェイピーピント)」の普及・定着の取り組みを行っている。Peppolは受発注や請求などの企業間取引で発生する文書のやりとりをスムーズにするための国際標準規格だが、JP PINTはその中でもPeppolネットワークでデジタルインボイスの送受信を行う日本標準規格である。

 インボイス制度では、適格請求書を電子データで配信・受領するデジタルインボイスの活用が推進されている。そこで行われる電子データ取引を中継するのが、Peppolネットワークとなる。Peppolに準拠することで、企業間の電子取引がスムーズになると期待されている。

「企業間で異なる配信や受領のツールを使っていても、Peppolネットワークを介することでやりとりが簡略化されます。取引先に対して『このツール、このやり方で帳票を配信してほしい』などと要望する必要もなくなるので、配信先・受領先双方のコミュニケーションのストレスも減っていくと考えています」(新井副事業部長)

 ただ、日本におけるPeppolの認知度は、「残念ながら非常に低いまま」と新井副事業部長は言う。

「インボイス制度が動きだせば、現場の業務負担は一気に上がることが予想されます。適格請求書を出す方は、出力するシステムに必要項目を入れれば対応できるので、ある程度準備が進んでいます。一方、受領側は、各社各様のフォーマットに適格請求書としての項目が満たされているか、人の目でチェックをしていかなければいけない。その運用を企業内のどの部署が、誰が担当するのかといった設計が追い付いていないところが多くあります。制度スタート後には、『帳票DXを進めて準備はしてきたつもりだったけれど、もっと効率化しなければいけない』といったニーズが、各社から出てくると考えられます」(新井副事業部長)

 そこで解決策の一つになるのが、適格請求書の標準フォーマットを導入すること。つまりPeppolの導入になるのではないかと新井副事業部長はみる。Peppol対応を進めるinvoiceAgentだからこそ、各社の課題にどう向き合うかが問われている。

「各社でオペレーション設計が追い付いていないのは、どうすればいいのかの最適解が、社会にまだ提示されていないからでしょう。経理がまとめて対応すべきか、現場がある程度チェックしたものを経理が集約すべきかなど、悩ましい課題が山積しています。invoiceAgentをどう活用するか、お客さまと一緒に模索しながらも、一歩先、半歩先を見据えた対応が当社には求められています」(新井副事業部長)