「リアル店舗とデリバリーの両立」という難題
飲食コンサルに千載一遇のビジネスチャンス!
フードデリバリーサービスは、日本では古くて新しいマーケットだ。「出前」自体は古くからあるが、フードデリバリー単独の市場としてカテゴライズされ、広く認識されるようになったのはここ数年のことだろう。
きっかけの一つは、16年9月のUber Eatsの日本上陸だ。スマートフォンのアプリで注文すれば、街に散らばる配達パートナーがさまざまな店のアツアツの料理を、指定した場所へ平均30分以内に届けてくれる。そんな斬新かつ利便性の高い同社のサービスが“起爆剤”となり、フードデリバリーサービスはたちまち多くの人々に受け入れられていった。
20年からのコロナの感染拡大期には、リアル店舗営業の代替手段としてフードデリバリーに取り組む飲食店が増加。同時に、外出自粛を余儀なくされた人々のデリバリーニーズも爆発的に高まり、市場が一気に拡大した。
だが、コロナ禍での急成長はあくまでも、フードデリバリー市場確立の「通過点」にすぎなかったと信濃氏は振り返る。前述した通り23年以降、フードデリバリー市場は第3フェーズに突入し、競争は激化。加盟飲食店の優勝劣敗が鮮明になっていく可能性が高いと予測する(下図参照)。
背景には、Uber Eatsだけで10万店以上(23年7月時点)に上るというアクティブ加盟店舗数(直近1カ月で1回以上オーダーが入った飲食店などの数)の激増があるが、それだけではない。アフターコロナでリアル店舗での接客などが忙しくなり、デリバリーとの両立が難しくなっているのだ。
かといって、世の中のデジタル化の流れは飲食業界にも容赦なく流れ込む。すでに大手ファストフードチェーンや都市部の飲食店は、モバイルオーダーやデリバリーなどの「オンライン化」による売り上げが、全体の40%を占める時代の到来を見据えているという。
リアル店舗のみの業務展開に完全回帰するのは現実的ではない状況だ。リアル店舗とデリバリーとの新たな両立スタイルを構築するために、飲食店には「デリバリーファーストの経営改革」が求められている。
「熾烈な競争を勝ち抜いていくには、デリバリーを成功に導くノウハウを知り、メニュー作りやサービスの提供方法、オペレーションなどに工夫を凝らすことが大切です」
中小加盟飲食店の売り上げ向上をサポートするUber Eats Japan SMBセールスオンボーディングマネージャーの内藤嵩人氏はそう語るが、実際、デリバリーしやすいメニューの開発や、配達パートナーが料理を受け取りやすくするためのデリバリーロッカーの設置など、変革は不可欠だ(下図参照)。