旅行者に「とっておきの日本」体験を提供し、観光立国日本の復活を目指す

　旅行業界が直面する課題についてもパネルディスカッションで議論し、遠藤CMOが、「富裕層はやりたいことに対する熱意や知識吸収欲が強い人が多いので、観光地側が自分たちの魅力をしっかりと発信していくことが誘客・滞在につながる」と締めくくった。

外国人旅行者向け観光に携わる3人の外部パネリストが、それぞれの立場から「高付加価値のコンテンツ作りと誘客について」をテーマにディスカッションした

「満足」を引き出す磨き上げたコンテンツを

　高付加価値市場の攻略はたやすいものではない。観光用に作ったものでは満足してもらえず、本物を見たい、本物に触れたいという志向が強く、磨き上げたコンテンツを提供する必要がある。

高付加価値旅行者は通常の観光旅行では出会えない体験を求める。「奈良県吉野の山守と大工を巡るプライベートツアー」（写真）は、500年の歴史を誇る吉野林業の担い手である山守と素材、技法、意匠にこだわる大工職人を巡り、仕事を見学し話を聞くツアーが喜ばれる

「美しい茶わんを見るだけでなく、それを作った陶芸家と話がしたい、お寺に泊まって住職から解説を聞き日本の精神文化を深く理解したい、など非常に要求水準が高いため、受け入れる側もレベルアップしなければなければなりません。また、高付加価値旅行者はホテル・旅館にはこだわりがあるので、観光資源の磨き上げだけでなく、宿泊施設などへの投資も必要です」（中山理事）

　視点を変えれば、高付加価値旅行の魅力的なコンテンツの開発は、新たな価値を創出する機会ともなり、それは旅行業界に限らずあらゆる業界にとってビジネスチャンスとなり得る。外国人旅行者に「とっておきの日本」体験を提供して、観光立国日本の復活をぜひ、期待したい。