インバウンドが急回復している。先日公表された2023年9月の訪日外客数推計値は、既に19年同月比9割を超え、新型コロナウイルス拡大前の実績に迫る勢いを見せる。東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪などの有名観光地を巡るゴールデンルートの人気が引き続き高い。しかし、観光立国を目指す日本政府の目標「訪日外国人旅行消費額5兆円の早期達成、2025年までに旅行消費額単価20万円」の達成に向けては、消費額の引き上げにつながる取り組みをさらに進める必要がある。日本政府観光局(JNTO)が取り組む旅行消費額引き上げの戦略とは?
高付加価値旅行の推進
ターミナル駅や空港で大きなスーツケースを転がす外国人旅行者の姿が目立つようになった。2022年10月の水際対策緩和以降、インバウンド(訪日外国人)数は順調な回復を見せている。
順調に回復するインバウンド業界においてコロナ前よりも活発になっている動きがある。「高付加価値旅行者」の獲得だ。高付加価値旅行者とは「航空券代を除き着地消費額が一人当たり 100 万円以上の旅行者」と定義付けられる。JNTOの調査によると、19年の高付加価値旅行の全世界(24市場)市場規模は18兆円に上り、うち訪日分は全体の3.8%の約7000億円にとどまっている。
また、23年3月31日に閣議決定した「観光立国推進基本計画」では訪日外国人旅行消費額を早期に5兆円にする(19年実績4.8兆円)、訪日外国人旅行消費額単価を25年に20万円にする(19年実績15.9万円)とある。目標を達成するためには、高付加価値旅行者の戦略的な誘致が一つの鍵となる。
次ページからは、JNTO理事がコロナ後の誘客のキーワードと、消費額引き上げの戦略について明かす。