「JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」から高付加価値旅行者獲得の「知恵」を

 JNTOでは、賛助団体・会員に向けて、多くの支援を実施している。その中でも年1回開催される「JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」は、海外26カ所にあるJNTOの全ての海外事務所長・海外事務所設置準備室長から最新の現地情報を収集できる絶好の機会だ。23年は9月6日・7日の両日開催され、海外事務所長らが登壇し、ペルソナ化(詳細にターゲットを設定)した訪日インバウンド23市場の特徴などを紹介した。

旅行者に「とっておきの日本」体験を提供し、観光立国日本の復活を目指す9月に行われた「JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」(左)。JNTO賛助団体・会員企業向けの個別相談会も開催された(右)
旅行者に「とっておきの日本」体験を提供し、観光立国日本の復活を目指す金沢市観光協会
遠藤由理子 CMO
少人数で高額消費をしてくれる富裕層の取り込みを重視する理由について、「今後も増えるであろうオーバーツーリズムの対策にもなり、シャワー効果により観光地・金沢の価値向上が期待できます」

 1日目はプログラムの締めくくりとしてパネルディスカッション「コンテンツの魅力を引き出せ!~高付加価値のコンテンツ作りと誘客について~」が行われた。

 パネリストの金沢市観光協会の遠藤由理子CMO(最高マーケティング責任者)は金沢市にとっての高付加価値とは何か、どのように推進しているかについて、DMO(Destination Management Organization)という立場から、「金沢市は一貫して欧米豪富裕層をターゲットにしてきた」と発言、その背景として、「金沢市が有する観光資源や文化資源が欧米豪のマーケットと親和性があること」を挙げた。高付加価値のコンテンツ作りについては、「その地域の普遍的・本質的価値、コアバリューの提供をとことん考えることで見えてくる」とした。一つ例を挙げれば、金沢に受け継がれて来た“ほんもの”の伝統工芸文化の魅力を体験できるプログラムで、伝統工芸作家の講話を聞いた後、非公開の工房を見学することだ。

旅行者に「とっておきの日本」体験を提供し、観光立国日本の復活を目指すバリューマネジメント・インバウンド事業部/PARTY&MICE事業部
松尾諒介ゼネラルマネージャー 
持続可能な観光地域づくりを行う重要なポイントは、「観光まちづくり基本計画の策定から、まちの方々の合意形成、計画を実施できる体制作り、事業運営までの全工程を担うことです」

 持続可能な観光地域づくり事業を展開する企業、バリューマネジメントのインバウンド事業部兼PARTY&MICE事業部の松尾諒介ゼネラルマネージャーは、地域にはさまざまな課題があるが、観光というアプローチにより解決することを目指している。松尾ゼネラルマネージャーは、「具体的には二つあり、一つ目が文化財や自然資源といった地域資源の活用とマネタイズ。そうすることで、税金に頼らず資源を保全することができます。二つ目が観光まちづくりコンサルティング。10年先、20年先、どういうまちを目指すのか、その計画を実施可能な体制を作り、地域住民の理解を得て実現するところまで伴走します。北海道から福岡まで25エリアで歴史的建造物82棟を活用して観光の武器にしています」。例として、木造天守を完全復元した愛媛県大洲市の大洲城を貸し切って宿泊する1泊2人100万円の高付加価値旅行の実現を紹介した。

旅行者に「とっておきの日本」体験を提供し、観光立国日本の復活を目指すEighty Days
グランジェ七海
代表取締役
富裕層の幅広いニーズに答えるため、「提供者側は松竹梅のコースを用意すると良い。お客さまの予算に応じて特別なコース(松)や出費が押さえられるコース(梅)を選ぶことができるからです」

 そしてインバウンド向け旅行会社Eighty Daysのグランジェ七海代表取締役は、自社のDMC (Destination Management Company)としての役割を「手配・予約を専門に行うランドオペレーターに近い」と説明。「当社は三つのパラメーターを持っていて、一つがストーリー、二つ目が演出、三つ目が登場人物です。これらのパラメーターをバランス良く上げていくことで、観光地の価値が上がります」。実際の旅行プラン作りでは、顧客が東京~京都~大阪~広島というゴールデンルートをリクエストしてきたら、「それらの観光地に加えて、ルートの間を埋める観光地、クラフトがお好きなら京都の前に金沢に寄るというような提案をします」と話した。