「持続可能な観光」「消費拡大」「地方誘客促進」

旅行者に「とっておきの日本」体験を提供し、観光立国日本の復活を目指す日本政府観光局 中山理映子 理事

 コロナ前と後ではインバウンドのトレンドに変化はあるのだろうか。JNTOの中山理映子理事は「持続可能な観光」「消費拡大」「地方誘客促進」というキーワードを挙げた。

「当たり前の行動に大きな制約がかかったコロナ禍を経て、世界の旅行者に持続可能性への意識の高まりが見られています。欧米を中心に、地球環境や訪問先地域に配慮するためなら多少出費がかさんでも構わないと考える旅行者が増えているとの調査結果もあります。地域に根付いた本物の体験を志向するとともに、環境や地域住民に配慮し、地域にポジティブな影響をもたらしたいと考える旅行者の誘致は、地域経済を潤し、地域の持続可能性を高めることにもつながります」

 さらに、消費拡大に向けては、「二つのアプローチがある」と中山理事。

「一つは高付加価値旅行者に来ていただくこと。高付加価値旅行者は、単に一旅行当たりの消費額が大きいのみならず、旅を通じて地域の伝統・文化、自然等に触れることで、自身の知識を深め、インスピレーションを得られることを重視する傾向にあるとされています。求められる観光コンテンツのクオリティーは高いですが、高い経済効果を得られるのみならず、地域の価値向上にもつながります。JNTOでは、①高付加価値旅行に関する国内関係者のネットワーク化、②高付加価値旅行者に刺さるサービス内容の収集・蓄積、③高付加価値旅行を取り扱う海外旅行会社へのセールス強化、④高付加化価値旅行者に対する情報発信の強化を柱に、各種取り組みを進めています」

「もう一つはマスマーケットの中でも消費単価の高い方を誘客することです。23年3月の『観光立国推進基本計画』をマーケティングに落とし込む指針として観光庁とJNTOが23年6月に策定した『訪日マーケティング戦略』では、定量調査の結果や各種知見を踏まえ市場ごとに「消費拡大」や「地方誘客」の観点から、有望なターゲットを選定しました。さらに、伝統工芸、ローカルフード、アウトドアアクティビティーなど各ターゲットに刺さる訴求パッション(旅行の興味・関心)や接触メディア、旅行手配経路を調査。JNTOではこの戦略に基づきプロモーションをきめ細やかに展開しています。各地域の皆さまにおいても各地域が持つ観光資源の強みに合う誘客ターゲットの絞り込みや観光地の整備など、是非この「戦略」を活用いただければと思っています」と、中山理事は言う。

「地方誘客促進も重要な課題です。インバウンドの訪問先は東京・京都・大阪に偏っており、有名観光地ではオーバーツーリズムの問題も指摘されています。当局では、農家や寺での宿泊、自然体験などその地域ならではの体験価値を積極的に紹介することにより、地方誘客の促進に努めています」と、中山理事は旅行業界を支援するJNTOの積極的な誘致活動の姿勢を強調した。