半導体生産に貢献する、60年間磨き続けたフッ素樹脂加工技術フッ素樹脂製の建築用膜材「チューコースカイTM」は、新幹線駅で初めて西九州新幹線・長崎駅の屋根に採用された。同じ素材のベンチも設置(写真提供:JRTT鉄道・運輸機構)

半導体産業が集積するシリコンアイランド・九州には、高い技術を持つニッチ企業も数多い。60年間の歴史を持つ中興化成工業(本社・東京)は、半導体生産には欠かせないフッ素樹脂加工製品の開発・生産・供給でシリコンアイランド経済を支えている。

 熱い視線が世界から注がれている九州経済。そのけん引役となるのが、半導体産業だ。1980年代、国内の有力半導体関連メーカーの九州集積が進み、「シリコンアイランド」と呼ばれた。近年政府は、国家戦略として半導体産業の復活に着手し、シリコンアイランドに対する半導体関連投資も再び活発化している。

半導体生産に貢献する、60年間磨き続けたフッ素樹脂加工技術フッ素樹脂の原料となる「蛍石」

 東京都港区に本社があり長崎県松浦市に主要な生産拠点を置く中興化成工業は、63年の創業時からフッ素樹脂の可能性に着目し、加工技術を磨いてきた。フッ素樹脂の原料は蛍石という鉱石。精製してPTFE、PFA、FEPをはじめとする9種類の樹脂になる。その中で最もポピュラーなのが、焦げ付かないフライパンでおなじみのPTFEだ。

 同社の半導体関連事業を統括する原口智己理事・半導体ビジネス部長は、一般にはなじみのないフッ素樹脂をこう説明する。

「フッ素樹脂はプラスチックの一つですが、一般のプラスチックとは異なり、耐熱性・滑り性・非粘着性・耐薬品性・低摩擦性・絶縁性などの優れた性質を兼ね備えた高機能樹脂です。建材、医療、食品、半導体など幅広い産業のお客さまの課題解決に役立つ製品を提供しています」