東京ドームの屋根に生きる
フッ素樹脂技術

 同社のフッ素樹脂製品の多くは工場や成形装置の中で使われており一般の目に触れることはあまりないが、ファブリック製品分野では88年、東京ドームの屋根膜に採用されたことで注目を集めた。

 屋根膜は外膜と内膜の二重構造になっており、観客が目にする内膜に同社のフッ素樹脂コーティングの恒久屋根膜材(厚さ1ミリメートル以下の薄膜)が使用されている。以来、国内外の多くの施設に同社の製品が採用され、近年では北京オリンピック会場「鳥の巣」、JR山手線新駅の高輪ゲートウェイ駅や西九州新幹線長崎駅のホーム屋根やベンチにも採用されている。

半導体生産に貢献する、60年間磨き続けたフッ素樹脂加工技術水圧によって成形するPTFE一体槽は継ぎ目がなくウエハー洗浄に使う洗浄溶液が漏れる心配がない。半導体生産の工程でなくてはならない作業に貢献

 フッ素樹脂の特徴を生かした製品は半導体生産分野でも数多くある。半導体デバイスを作るための円盤形のシリコンウエハーは清浄でなければならないため繰り返し洗浄される。その洗浄工程で使われるのが、耐薬品性に優れた同社のPTFE一体槽だ。PTFEを使用し、水圧を利用したアイソスタティック成形法で継ぎ目のない一体成形槽は、小型の製品から業界最大級の寸法の製品まで、きめ細かく取りそろえている。現在は顧客の要望により、「一度により多くの枚数を洗浄できる大型一体槽の生産に取り組んでいます。水圧のかけ方など長年蓄積してきたフッ素樹脂の独自加工技術があるからこそ、お客さまが求める製品を作ることができるのです」と原口理事。自社の高い技術力に自信を見せる。
 

半導体生産に貢献する、60年間磨き続けたフッ素樹脂加工技術中興化成工業
原口智己
理事・半導体ビジネス部長

 PTFE溶接槽は、溶接技術が肝。「鉄とは違いフッ素樹脂は非粘着の素材なので溶接には高度な技能が求められます。そのため当社の溶接技能者には年1回、社内の溶接技能試験を受けて合格することを義務付けています」。この他にもPTFE、PFAを使った洗浄溶液用チューブなど、半導体産業の川上で貢献しているフッ素樹脂製品を多くラインアップしている。

 同社の各種フッ素樹脂製品の生産には長い歴史があるが、半導体産業向けの製品群の強化と営業力強化に本格的に乗り出したのは2020年4月。シリコンアイランド復活を視野に入れ、生産と営業を一体にした「半導体ビジネス部」を設置した。