行徳の老舗海苔店、ゆとりある老後を過ごす“経営者のための対策“を見つけた「小規模企業共済の仕組みはとても分かりやすかった」と話す加藤さん

家族が持ち帰ったパンフレット
「あんしんゆとりある未来」の文字が躍る

「経営に夢中になっていて、引退後の生活資金計画などは全く考えていませんでした」と話す加藤さん。パンフレットには「小規模企業共済」とあり、「退職後のゆとりある生活を応援します」「備えてあんしんゆとりある未来」という文字が躍っていた。

 その小規模企業共済制度とは、国の機関である中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する退職金制度だ。小規模企業の経営者や個人事業主が廃業や退職するときに、その後の生活を安定させたり、事業の再建に備えたりできるようにと1965年にスタートした。小規模企業経営者や個人事業主は会社員などと比べ、当時から社会保険や労働保険といった各種制度の恩恵を受けることが少なかったため、社会保障政策の不備を補充する機能を果たす目的で設立された。

 加入対象は、常時使用従業員20人以下(業種により異なる)の小規模企業の経営者や役員、個人事業主、共同して事業を行う共同経営者。毎月一定額の掛金を積み立てることによって退職金をもらうことができる。在籍者数は約162万人(2023年3月末時点)で多くの経営者に支持されていることが分かる。

 加藤さんも「パンフレットを読んで(老後の備えがないことに)ハッとなると同時に面白い制度だなと思い、早速市川商工会議所に説明を聞きに行った」と言う。小規模企業共済の説明や加入手続きは、中小機構が業務委託契約を結んでいる商工会議所、商工会などの団体または銀行、信用金庫、信用組合などの金融機関の窓口でできる。

 加藤海苔店が会員となっている市川商工会議所は業務委託先であり、話はスムーズだった。現在は、各窓口の他にも、中小機構の「小規模企業共済オンライン手続きポータル」にアクセスしてオンライン加入することもできる。ただし、加入申請前には注意事項をしっかり理解することが重要だ。

「小規模企業共済に加入して毎月の掛金を積み立てていくことにより、将来の退職金を積み立てることができる。しかも掛金が全額所得控除になって税の優遇も受けられるという説明を聞いて、勉強不足を痛感しました。それに事業資金の借り入れもできる便利な制度があるなんて全く知らなかった」。加藤さんはすぐに取締役でもある妻の玲子さんにも勧め22年5月、2人で加入した。

 玲子さんは、加藤さんとは違う角度から、小規模企業共済の良さをこう話す。「商売をしていると、商売のためのお金はためられても、自分たちの将来に備えたお金はためにくいものです。でもこの制度を利用すれば、自動的に毎月退職金を積み立てることができるので、将来の安心につながります」。