薄く、強く、美しい「土佐和紙」が日本の時計ならではの個性を創る
シチズンは、薄さ、強さ、美しさで世界から高評価を得る「土佐和紙」を2017年発売の「ザ・シチズン」の文字板に初めて採用し、現在まで独自の世界を開拓してきた。どこまでも白く美しい理想的な文字板を探求する過程で、試行錯誤の末にたどり着いた和紙だったが、白い手漉き和紙の文字板に始まり、グラデーションによる繊細な色彩で日本の情景を表現したり、箔を加えて華やかな表情を演出したり、また和紙に藍染めを施すなど、探求はたゆみなく続き、今や他の何者にも代え難い個性になった。
この「ザ・シチズン」限定モデルに使われている土佐和紙は、世界で最も薄い和紙とされる高知県「ひだか和紙(有)」の「典具帖紙(てんぐじょうし)」だ。文字板の構造は基本的に上板と和紙の2重になっていて、基部に当たる反射板の上にセットされた和紙に職人が砂子蒔き技法により、網の付いた竹筒に入った粉末状のプラチナ箔を散らし、その和紙の上にインデックスやイーグルマークを据えた透明な上板を重ねて作る。ちなみに、透明な上板には和紙の変色防止のための紫外線吸収剤が練り込まれているので、和紙の日焼けや退色の心配はない。
自然素材の和紙と職人の手作業による砂子蒔きで作りあげられた特別仕様の文字板は、全て表情が異なり、二つと同じものは存在しない。その意味で個々の腕時計は全てが一点物の作品と呼べる。「ザ・シチズン」には、土佐和紙とプラチナ箔による白文字板のみならず、同じ手法で土佐和紙に金箔を施した黒文字板の限定モデルも9月に先行販売されている。
金沢のプラチナ箔や金箔を用いたこれらの和紙文字板は、シチズンと長く共創を続けてきた福島県会津若松市の「坂本乙造商店」とのコラボレーションによるもの。1900年創業の同商店は、伝統的な漆を現代の工業製品に生かすスペシャリスト。これまでも「ザ・シチズン」では、25周年記念モデルの和紙金箔文字板、あるいは和紙文字板の裏に箔で模様を施した「影蒔絵(かげまきえ)」などに匠の技を遺憾なく発揮してきた。
高精度ムーブメントやユニークな和紙文字板と並んで、シチズンの独自性を語るもう一つの特長が、ケースやバンドに用いられたさびにくく肌に優しいスーパーチタニウムである。シチズン独自のチタニウム加工技術と表面硬化技術(デュラテクト)を施したこの素材は、ステンレススティールより約40%軽く、硬度は約5倍だ。
これにより、表面硬度が飛躍的に高まり長年の使用にふさわしい耐久性が増しただけでなく、明るく透き通るような色調が生まれ、ケースの白い輝きに縁取られてプラチナ箔を施した和紙文字板がいっそう引き立つようになった。快適な着け心地と上品な表情の両立に注力した「ザ・シチズン」