阪和興業は鉄鋼を中心に幅広い商材を扱う独立系商社。国内外の販売網を拡大しながら過去最高益を達成、財務基盤やガバナンスを強化しながら、さらなる飛躍を目指す。「商社は人なり」の信条に基づき、従来比3倍の予算をかけ教育体制を整備し、グローバル人材を育成している。
鶴田秀行 執行役員
1947年の創立以来、鉄鋼事業を中心に、各種メタル、食品、エネルギー、生活資材、木材、機械など幅広い商材を扱う商社として業界に確固たる地位を築いてきた阪和興業。最大の特徴は、独立系商社であること。系列の制約やしがらみがなく、自由な発想で柔軟に動ける強みがある。第9次中期経営計画の最終年度だった2022年度、連結経常利益は過去最高となる642億円を計上した。
「国内で展開する“そこか(即納、小口、加工)戦略”や、ASEANを中心としたアジア地域における販売網の拡大、さらには戦略的投資による国内外のグループ各社の収益の拡大が今回の利益に結び付いたと考えています。いわばまいた種が、花を開きつつある段階。『中期経営計画2025』は“Run up to HANWA 2030”と名付け、財務基盤やガバナンスを強化して攻めと守りのバランスを取りながら、未知への飛翔を目指します」
そう説明するのは、鶴田秀行執行役員だ。
現在の事業戦略の目玉の一つはEV電池材料の調達強化。市場環境が大きく変わる中、21年に発足した「電池チーム」をグローバル体制に刷新、世界の自動車メーカーや資源メーカーと提携しながら、偏在する電池資源の確保を推し進めている。またリサイクルメタル事業では、リサイクルトランスフォーメーションを地道に推進、既存の回収・加工拠点を軸に、日本最大規模の金属リサイクル事業を構築している。
主力の鉄鋼事業では、アジア地域を中心とした海外での地産地消型ビジネスの拡大によって取扱量が増加。22年6月には、一般鋼材や建材製品の販売や加工を行う「阪和ダイサン」を子会社として設立、同年12月には鉄鋼流通業者である「田中鉄鋼販売」をグループ会社化するなど、東日本地域においても「そこか」事業の強化を図っている。