リーダーシップ論の第一人者が説く、変革待ったなしの日本で「アジャイルな対応力」が必要な理由

IMF(国際通貨基金)の予測によれば、2023年の日本の名目GDP(国内総生産)は長年維持してきた3位から4位へ転落する見込みとなった。また、スイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)の「世界競争力ランキング2023」で、日本は64カ国・地域中35位と過去最低を2年連続で更新している。経済も競争力も低迷している状況を変えるため、リーダーはどうすればいいのか。リーダーシップ論の第一人者である一條和生氏(IMD教授、一橋大学名誉教授)と、企業の変革を促すフレームワーク「SAFe」を世界で2万社以上に提供するScaled Agile(スケールド・アジャイル)のキーパーソンが、現状打破の道筋を探った。

競争力低下の理由は「アジャイルに動ける経営者」の不足

「失われた30年」が示す経済の長期停滞と歩調を合わせるように、日本の国際競争力もこの30年で著しくちょう落している。IMDの「世界競争力ランキング」で、日本は1992年まで首位だったが徐々に順位を下げ、この5年間は30位以下まで落ち込んでいる。2023年は過去最低の35位となり、アジア太平洋地域では14カ国・地域中11位となった。なぜここまで転落したのか。IMD教授、一橋大学名誉教授の一條和生氏は、「経営者の実務能力に対する評価が低い」と指摘する。

「とりわけ足を引っ張っているのが、意思決定の迅速さや脅威への対応力などの『経営プラクティス』の項目で、64カ国中62位です。予測不可能な変化が起きたとき、速やかに変革を起こして対応していく“アジャイルな力”が経営者に欠如しているということです」(一條氏)

 30年前に世界トップクラスだった能力は、決して失われているわけではない。ただ、時代の変化に伴って、経営に求められる能力が変わってきたということだ。

 次ページからは、予測不可能な時代において経営者に求められる「アジャイルな対応力」を磨くためにはどうすればいいのか、そして、世界で約2万社が採用する、組織全体をアジャイル化するためのフレームワークについて、紹介していく。