経営者やリーダー層のみならず、変革への強い意志を持つメンバーを巻き込んだ組織変革を実現し、アジャイルな対応力を組織全体に実装するためのフレームワークが、Scaled Agileの提供する「SAFe®️」(Scaled Agile Framework、セイフ)だ。

「SAFeは、システム開発などITプロジェクトだけに閉じたものではなく、企業全体のアジャイルな対応力を高めるフレームワークです。経営者やリーダー層だけでなく、組織全体がどのようにイノベーションを起こし、顧客にどのような価値を届けていくかといったことを体系的にまとめています」(中谷氏)

リーダーシップ論の第一人者が説く、変革待ったなしの日本で「アジャイルな対応力」が必要な理由SAFeの最新版である「SAFe 6.0」のフレームワークの全体像と各要素を示す図。SAFe 6.0では、「ビジネスアジリティの基盤強化」「チームへの権限委譲と責任の明確化」「バリューフローの加速」「ビジネス全体のアジリティ強化」「AI・ビッグデータ・クラウドの活用」「メジャー&グローとOKRによる成果の達成」といったテーマに基づいたアップデートが実施されている 出所:Scaled Agile, Inc.
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 前述の通り、多様性に富んだ組織を動かすことは難しくなっている。適切なコミュニケーションを図るのも簡単ではない中で、SAFeのようなフレームワークは共通言語として有効に機能するというわけだ。例えば、コンサルティングファームに支援を依頼するときなど「丸投げ」になりがちだが、SAFeのフレームワークにはそれを防ぐ内容も盛り込まれている。

リーダーシップ論の第一人者が説く、変革待ったなしの日本で「アジャイルな対応力」が必要な理由Scaled Agile-Japan
ストラテジックアドバイザー
SAFeプラクティスコンサルタントトレーナー
中谷浩晃氏
※取材当日はオンラインにて鼎談に参加

「いかなるときも俊敏に対応できる力を磨くことにつながる古今東西のさまざまな考え方やナレッジを取り入れている上、2万社を超える導入企業・行政組織からのフィードバックを常に取り込み、進化し続けています。さらに、トヨタ生産方式(TPS)を基に体系化されたリーン思考も取り入れているのです」(中谷氏)

 Scaled Agileが米国企業であることから、SAFeのフレームワークと日本企業との相性を懸念する人もいるだろう。しかし、このリーン思考を取り入れていることからも、洋の東西を問わず活用できる普遍性が備わっていることが分かる。「欧米の良さと日本の良さをうまくインテグレートしているところが非常に重要」と一條氏も高く評価する。

「工場労働者にラインを止める権限を初めて与えたトヨタ生産方式は、あらゆる階層にリーダーシップを付与し、問題解決の力を発揮させることが正しいと証明しました。そうした考え方も取り入れているSAFeは、組織全体の変革能力を高めるトリガーとして期待できます」(一條氏)

日本の伝統的な業界大手企業もSAFeを活用

 一條氏が期待するトリガー効果は、すでに多くの導入企業で表れている。その一つがNTTデータだ。言わずと知れた日本におけるシステムインテグレーターの先駆け的存在だが、マーケットのスピードにどう対応していくかが大きな課題だった。トップが組織変革を模索する中、現場から「SAFeを取り入れたい」との声が上がり、そのメンバーらがチェンジ・エージェントとなって取り組みを開始。結果、新サービス提供までのリードタイムを半分に短縮できたという。

「多数の企業を支援していますが、スムーズな成功を実現する企業には、例外なく変革への強い思いを持つ人がいます。いかに“自分事”としてアジャイルな対応力を磨くか。これが、組織変革の大きな原動力になると確信しています」(中谷氏)

 もちろんこれは、経営者自らが変革への強い意思を持つことが大前提となる。そのことを強く意識し、トップのマインドセットを変えるために動いた伝統的な日本企業の一つが、東京電力ホールディングスだ。常務執行役CIO(最高情報責任者)・CISO(最高情報セキュリティ責任者)の関知道氏の主導の下、経営層およびリーダー層がSAFeのエグゼクティブ向けトレーニングを受講し変革を推進しているという。

「東京電力ホールディングス様は、2050年カーボンニュートラルに向け、今のままでは目標を実現できないという強い危機感をお持ちでした。組織変革のためにリーダーのマインドセットを変えることが不可欠と決断し、SAFeを活用されています」(古場氏)

 変化に対応するには、マインドセットから変えなければならないのは誰しも理解しているだろう。しかし、具体的な道筋が描けなければ停滞してしまう。手をこまねいて日本の競争力低下と運命を共にするのか、思い切った変革へかじを切るための手を打つのか。後者を選択するならば、経営に直結するアジャイルな対応力の向上につながるSAFeは検討に値するといえよう。

一條和生氏が登壇。SAFeへの理解を深められるイベントが開催

2024年2月7日(水)、SAFeについての理解をより深めることができるイベント「JAPAN SAFe シンポジウム 2024」が東京・恵比寿のウェスティンホテル東京にて開催される。基調講演には一條和生氏が登壇し、「新しい企業の競争優位、フューチャーレディ」をテーマに、企業に求められるアジャイルな対応力についてさらに踏み込んだ話を展開していく予定だ。東京電力ホールディングスや、半導体検査装置メーカー大手のアドバンテストなど、導入企業による事例紹介も多数用意する。アジャイル経営を推進しようと考える経営者の方や、変革を希求するビジネスパーソンはぜひ参加を検討してほしい。

 

イベントの詳細および申し込みは以下URLから
https://safe-symposium.net

●問い合わせ先
Scaled Agile-Japan合同会社
URL:https://scaledagile.com/jp/