八つの事業が経営を
安定させ雇用を守る
ナブテスコは2003年、ナブコ(1925年設立当時は日本エヤーブレーキ)と帝人製機(44年設立当時は帝人航空工業)という長い歴史と高い技術を持つ両社が経営統合して誕生した。主要製品は精密減速機、油圧機器、鉄道車両用機器、航空機器、舶用機器、商用車用機器、自動ドア、包装機の8製品(事業)。どの製品も高い市場シェアを占めている。
例えば、産業用ロボットの関節に使われる精密減速機。歯車でモーターの回転速度を下げることにより高いトルクを得る装置で、世界シェアに照らしてもトップクラス。
「精密減速機は当社の主力製品であり、ニーズが非常に高まっています。ロボットは自動車産業で多く使われていますが、人員不足が深刻な他の産業でも急速に導入が進んでいて需要に供給が追い付かない状況です」
そこで精密減速機の新たな生産拠点として23年9月、静岡・浜松市に自動化率90%以上を目指す「世界No.1のスマート工場」をコンセプトにした浜松新工場を完成させた。この工場は、同社が高精度な製品を大量生産する生産技術を保有していることの証明でもある。
航空機器ではフライト・コントロール・アクチュエーション・システムと呼ばれる、航空機の3次元の動きを正確にコントロールする装置を航空機メーカーに納入。国産機はもちろん、ボーイング社の777型機や後継機の777Xなどにも採用されている。
食品などを袋詰めする包装機は、70年に充填包装の一連の動きを1ラインで実現するロータリー包装機の開発に世界で初めて成功して以来、幅広い業種に多様な包装機を提供。レトルト食品用充填包装機の国内シェアもトップクラスだ。
これら8事業はどれも非常に高い市場シェアを誇り、リスク分散による経営の安定にも大きく貢献している。また、雇用と技術の維持・向上にも役立っている。その例として、木村社長は航空機器事業を挙げた。「コロナ禍では旅客数が激減し、航空機の大幅な減産の影響を受けたのですが、当社ではリストラをせず、8事業を持つ強みを生かして一部の技術者の皆さんに一時的に他の好調な事業に移っていただいて雇用と技術を維持しました。この措置はリストラによる企業体力の低下を危惧する海外企業のお客さまに非常に喜んでいただきました」。
そして、高いシェアを獲得していることで「各業界の最新技術動向が自然に集まってきて、世界でもトップクラスのお客さまとの取引を可能にしているのです」と、説明する。