米国でジョブ型は限界、日本の人材余力はスキルで活かす

エンタープライズ向けの統合人事システムを開発するWorks Human Intelligence(WHI)は2023年11月15日、「働きがいも企業成長も」をテーマとする企業経営カンファレンス「COMPANY Forum 2023」を開催。今年は、プロゴルファーの宮里藍氏・聖志氏、キャスターの安藤優子氏、国立情報学研究所教授の新井紀子氏、宇宙飛行士の野口聡一氏など各界の著名人が招かれ、人と企業の成長のヒントが得られる講演を行った。その導入セッションに登壇した同社の安斎富太郎CEOは、米国のHRテクノロジーの最新潮流を紹介し、そのトレンドを日本企業はどう捉え、現状を変革していくべきかについて提言した。

米国はジョブ型雇用の限界を迎えている

 イベントの冒頭に登壇した安斎富太郎CEOは、まず世界のHRテックの最新動向として、米国のトレンドを紹介した。同社は2023年10月に米国・ラスベガスで開催された世界最大のHRテックカンファレンスにCHRO(最高人事責任者)や開発担当執行役員を派遣した。そこで得た知見を基に、「いま米国のHRテック業界では、『スキルベースマネジメント』と『AIによるHR変革』が最も注目されるテーマとなっています」と解説した。

 スキルベースマネジメントは、ジョブ(職務)を定義して、それにふさわしい人材を登用する従来の「ジョブ型雇用」とは異なるアプローチの人材マネジメントだ。文字通り、人材のスキルをベース(原点)として、それに当てはまるジョブを割り当てる。

 この“大転換”の背景には、米国が直面する深刻な人手不足がある。

「米国の経済規模は過去30年で4倍超にも成長しており、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)などアジェンダの増加や、それに対応するテクノロジーの急速な進歩とともにジョブの数は急増しています。にもかかわらず、米国でも少子高齢化で出生率が低下しており、増え続けるジョブに当てはめられる人材が不足し始めているのです」(安斎CEO)

 次ページでは、日本が実は「人手」不足ではないという真逆の事象を明らかにするとともに、日本企業が「ジョブ型雇用」に走る現状に警鐘を鳴らす。