森田 これまでは、仕事は社内の自分のデスクでするのが当たり前の時代でした。従業員には自分のデスクがあり、役員は役員室がある。部署ごとに場所が区切られ、皆が自由に交流できる場をつくるといった考えも珍しかったのです。
ところが、コロナ禍の少し前からフリーアドレスが増え、オフィスをクリエイティブな場として捉える機運が高まりました。そして、コロナ禍を経て、出社して働かなければいけないという固定観念はなくなり、オフィスの在り方も多様化し、変化していきました。
北村 海外の傾向を踏まえながらも日本独自の進化を感じます。
1990年代に、私は米国でインテリア・アーキテクチャーを学んでいましたが、ヤフーやグーグルのオフィスを見て衝撃を受けたのを覚えています。スケートボードで出社したり、社内にバスケットコートがあったり。こんなに楽しそうに働けたら、イノベーティブなアイデアがたくさん湧くはずだ、と。さらにいつか、日本にも「人中心」のワークプレイスデザインが必要になるときが来ると確信しました。
そして今、ようやく日本でも、個人の幸せに重点を置き、高いパフォーマンスを発揮して、自律的に働くことができるオフィスが求められています。オフィス自体が、企業カルチャーを体現する場にもなっているのです。
オフィスは働く人の幸福度を左右する
森田 確かにそうですね。働く人の幸福度には、確実にオフィスも影響していると思います。従業員が笑顔で働けば、その楽しさは周囲に伝播します。
企業が従業員を大事にしているかどうかは、オフィスデザインに表れますし、従業員はそれを働く中で感じ、パフォーマンスにも反映されていくので、企業の生産性も上がっていくのではないでしょうか。
――オフィスの在り方も変化し、オカムラでは、「SCOPE はたらき方のトレンド 2024」(図3)を発表していますね。
森田 はい。海外にはオフィストレンド予測を発表する企業が多く、日本ならではのトレンドを提唱したいと考えていました。当社は、43年前からオフィス研究所を擁し「働く」を考えてきました。企業がオフィスを見直すときのよりどころや指針になればと考え今回初めてトレンドを発表しました。トレンドではありますが、短期的な流行りだけではなく、中長期的にオフィスの在り方において大切にしたいことを押さえ、さらにテクノロジーの急速な進化による社会的変化も視野に入れた内容になっています。
オカムラとしては、仕事と生活ははっきりと分けられるものではなく、生き方と働き方は相互に影響していると捉えており、3つのカテゴリーから9つのトレンドをひも付けて今回トレンド提案をしています(図3)。
北村 経営者だけでなく、従業員が自分の働き方とリンクさせて考えることもできますよね。
イノベーションを起こす場を体現するオカムラの新オフィスとは
――そうしたトレンドを体現する新オフィス「We Labo」とは、どんなオフィスですか。