先述したように、「打ち手」を考える場合、データの可視化と定量化が不可欠であり、そのためにはデジタルツールを用いることになる。EX向上は、全社的・横断的に体系化された取り組みにすることが重要だ。全体のグランドデザインを設定し、「継ぎはぎ」のピースを芸術的なパッチワークキルトのように仕上げる。そのようなきめ細かな支援がPwCによるEXコンサルティングの真骨頂である。
データ分析に基づいた従業員の体験価値改善のサイクルを高速で回す
さて、ここではPwCによるEXコンサルティングの事例を二つ紹介しよう。
大手不動産企業のA社の場合では、同社が働き方改革を推進するために導入を決めた「Microsoft365」の運用支援をEXの観点から行った。従業員の職種ごとにペルソナを設定し、日常業務においてMicrosoft365をどのように活用すれば、生産性を向上できるのかを検証。導入後にそれぞれの職種の業務効率を大幅に向上させた。その後、コロナ禍が発生したが、ハイブリッドワークが可能な体制を構築できていたため、問題なく乗り切ることができた。
現在は、生産性とウェルビーイングの向上を支援するEXプラットフォーム「Microsoft Viva」も導入。Viva Insightを活用して、Microsoft 365のアクティビティデータを基に、チームや個人の働き方をデータによって可視化し、それぞれのパフォーマンスの改善に役立てている。
「例えば、多人数・長時間の会議を頻繁に開いているチームや、逆に孤立している従業員がデータから分かりますから、データを基に打ち手を考えて改善しています。この様に、EXの向上には従業員の行動や感情をデータで把握し、テクノロジーを活用して従業員の体験価値改善のサイクルを高速で回していくことが重要です。Microsoft Vivaには他にも従業員の声を収集・分析するViva Glint、組織の目標と従業員の業務の関連性を明確にするViva Goals、日々の業務に役立つ学習コンテンツを提供するViva Learningなどの機能を備えており、EXの向上に役立つ機能が包含されています」(大野ディレクター)。
大手IT企業のB社には「ITエンジニアの育成と定着を図るため、リスキリングやアップスキリングの制度を整えたい」という要望があった。そこでPwCコンサルティングでは、対象となる従業員のペルソナを設定し、ジャーニーマップを作成。従業員のスキルやキャリア目標などを可視化し、スキルギャップを埋める学習コンテンツを提供した。
具体的には、人材派遣会社との協業によってITエンジニア向け人材育成支援サービスを提供。自然言語処理技術を用いたスキル可視化エンジンを用いて、本人のスキルの可視化やキャリア目標の提案、スキルギャップを埋める学習コンテンツの提案・提供を行い、自発的なスキルアップを支援している。
「対象としているのは、自律的に学ぶことが苦手なITエンジニアです。そのため、自律学習を阻む要因となっている『現在位置(現在のスキル)が分からない』『目指すべきゴール(キャリア目標)が分からない』『ゴールへの向かい方(学習方法)が分からない』という“三つの分からないこと”を、独自開発したツールで解消しているのがポイントです」(大野ディレクター)。
実際、「学ぶべきスキルや目標が明確になった」「自分の成長に確実につながる」と好評だ。一方、企業からも「自発的な学習を促進できるのはもちろん、従業員のスキルが可視化されたことによって適材適所の配置も行えるようになった」と高い評価を得ている。
このように、EXを向上させるためには、常に社員の目線に立って体験価値を把握し、それぞれの価値観に合わせた施策を打たなければならない。このプロセスと先進テクノロジーを用いた制度設計・実行をワンチームで支援しているのが、PwCコンサルティングなのである。
もし「人材の流出が多く、社員が定着しない」「優秀な人材に対する組織の魅力度を上げて、企業の成長につなげたい」といった課題を抱えているなら、EXの観点から根本的な解決策を考えてみてはどうだろうか。
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