日本政府による次世代DRAM製品の開発への支援

 マイクロンが「1β」に続く次世代半導体メモリとして、現在開発を進めているのが「1γ(ワンガンマ)DRAM」である。

 現時点で世界最高速・最大容量である「1β」よりもメモリセルをさらに微細化し、メモリ密度の向上、消費電力効率の改善、ビット単価の低減を目指している。

 つまり、より速く、大量のデータを処理できるだけでなく、“省エネ”や“コスト削減”の効果も期待できるのである。

 リー代表取締役は、「日本政府が推進しているGX(グリーントランスフォーメーション)にも大きく貢献できるものと確信しています」と語る。

「私たちが普段利用するAIは、一般に大規模なAIデータセンターの中で動いています。その演算処理やメモリ駆動によって消費される電力は非常に膨大で、地球温暖化を促す要因の一つとなっています。半導体メモリの消費電力効率を改善すれば、日本だけでなく、世界中のGXをさらに加速させるのです」

 新しい半導体を開発し、量産するまでには、巨額の投資が必要だ。特にマイクロンが開発を進めている「1γ」は、製造技術として最も複雑で高難度とされる極端紫外線(EUV)露光を用いた生産が予定されている。製品そのものだけでなく、製造技術の開発にも多額の資金を投入する必要があるのだ。

 マイクロンは2023年10月、広島工場がこのEUV露光技術によるDRAMを開発するため、経済産業省から最大1920億円の助成金を受けることを発表した。日本政府もマイクロンによる高速・大容量の半導体メモリの開発に大きな期待を寄せていることが分かる。

マイクロンメモリ ジャパン 広島工場

 周知の通り、日本はいま、半導体の安定供給確保と国際競争力強化のため、海外の半導体メーカーに積極的な招致活動を繰り広げている。

 その中でもマイクロンは早くから日本に進出し、国内唯一のDRAMメーカーとして実績を積み上げてきた。現在、広島工場を中心に国内で4000人以上のエンジニアや技術者が働き、世界最先端のDRAM製造拠点の一つとなっている。

 そうした実績に加え、最先端の半導体メモリ開発で世界をリードする存在であることも、日本政府が積極的な支援に乗り出した理由の一つだろう。

 リー代表取締役は、「日本政府からは、『1β』の開発でも多大なご支援をいただきました。今回、『1γ』の開発についても並々ならぬご支援をいただき、心から感謝しています。マイクロンにとっても非常に重要なテクノロジーを広島で開発できることは、日本の半導体産業の競争力強化に必ず貢献することでしょう」と語る。

 またリー代表取締役は、日本政府が海外の半導体メーカーの招致や、人材育成を含むエコシステム構築に積極的に取り組んでいることについて、「われわれプレーヤーにとっても、ビジネスを発展させる上で望ましい環境が整いつつあります。半導体産業の競争力強化に向け、日本政府が支援してくれたことをうれしく思います」とも語っている。

マイクロン広島工場のクリーンルーム

 マイクロンは、経産省からの助成金を含む約5000億円を投じてEUV露光技術を用いたDRAM開発を加速させる方針だ。25年には、広島工場でEUVを用いた「1γ」の生産ラインの立ち上げを目指している。