人材育成を通じて日本の半導体エコシステム形成に貢献
リー代表取締役は、日本の半導体産業の強みの一つとして、「非常にスキルが高く、優秀な人材がそろっている」ことを挙げる。
国内では4000人以上のエンジニアたちが働いているが、「ここ数年、グローバル全体としても顕著なほど、広島でエンジニア、技術者を積極採用しています。それだけ製造拠点としての重要性が高まっていることも一因ですが、優秀な人材が豊富であることも、採用を増やした大きな理由です」(リー代表取締役)。
特筆すべきは、女性人材の採用数が増えていることだ。広島工場を含むマイクロンメモリ ジャパンの女性社員の比率は、近年で56%も拡大。新卒採用では、女性の比率が約40%に上るという。
「多様な人材を採用して活躍の場を提供するのは、マイクロンの文化です。半導体製造のエンジニアだけでなく、データサイエンティストやAIのスペシャリストなど、さまざまなバックグラウンドを持った人材を受け入れています」とリー代表取締役は語る。人材の多様性が、世界をリードする革新的な半導体メモリ開発の源泉となっているのだろう。
ジョシュア・リー 代表取締役
シンガポール国立大学にて電気電子工学を学び、工学修士を取得、1999年にマイクロンのシンガポール工場(旧テックセミコンダクター)にインターンとして入社、その後20年以上にわたり技術開発・移管、製造量産、工場建設などを経験し、2021年5月より現職。産学連携の強化に貢献し、マイクロン財団のプログラムを通じてSTEM教育の推進と学部生の育成のための産学連携プロジェクトも数多く立ち上げている。
半導体テクノロジーは絶えず進化を遂げており、未来に向けた人材育成も不可欠だ。これはマイクロンに限らず、業界全体に共通の課題である。特に、少子化や若者の“理系離れ”が進む日本では、将来を担う人材の確保は避けて通れない問題だ。日本が半導体産業の国際競争力を高める上でも、大きなネックとなる。
そうした時代の要請に応えて、マイクロンは23年5月、「UPWARDS for the Future」(半導体の未来に向けた人材育成と研究開発のための日米大学パートナーシップ)の創設を発表した。日米両国で、より強固で高度な技術を持つ半導体人材の育成を目的とし、半導体のカリキュラムを履修する学生の増員を目指すとともに、新たな研究活動の推進を支援するためのパートナーシップである。
日本から広島大学など5大学、米国からは6大学の計11大学が集まり、最先端の半導体カリキュラムを策定し、相互に協力していく機会を創出するという。マイクロンを筆頭とする半導体業界パートナーが創設したものだが、両国政府も後押ししており、パートナーシップの覚書には米国のアントニー・ブリンケン国務長官、日本の永岡桂子文部科学大臣(当時)が調印した。
リー代表取締役は、「専門人材を育成するためには、まず裾野を広げなければなりません。半導体に興味を持つ学生を一人でも増やし、できるだけ多くのスペシャリストを育てていきたい。日本からの多大な支援に恩返しする意味も込めて、これからも日本政府が進める半導体エコシステムの形成に貢献していきます」と語った。