【特別講演】働き方・生き方の選択肢があり自己決定できるようにする

 フォーラムの最後に登壇したのは、公益財団法人Well-being for Planet Earthの石川善樹代表理事である。

「ウェルビーイングが企業と社会の成長をもたらす」というテーマで講演を行った。

チーム力と社員のやりがいを引き出し、組織の力を極大化する「健康経営大会議」予防医学研究者、博士(医学)石川善樹
1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、米ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。公益財団法人Well-being for Planet Earth代表理事。「人がよく生きる(Good Life)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、概念進化論など。近著は、『フルライフ』(NewsPicks Publishing)、『考え続ける力』(ちくま新書)など。

 石川代表理事はまず、岸田文雄総理大臣が23年10月23日に行った所信表明演説の中に、「ウェルビーイング」という言葉が盛り込まれたことを紹介。

 その意図について、「岸田政権が掲げる『新しい資本主義』、つまり『成長と分配の好循環』を実現するため」と説明した。

 石川代表理事によると、1990年代初めのバブル崩壊以降、企業が生み出した付加価値の分配は株主を重要視してきた。

「『成長と分配の好循環』を実現するには、付加価値の配分について難しいバランスを取る必要があります。特に日本のような成熟経済下においては、そもそも企業が生み出す付加価値に高い成長性がない中、株主還元や賃上げ、投資などに対してどのように分配を行うか、繊細にバランスを取らなければ持続的な成長は難しくなります」

 次に石川代表理事は、世界全体のウェルビーイングがどういう状況になっているのかについて解説した。

 21世紀に入ってから、世界の1人当たりGDP(国内総生産)は右肩上がりで伸び続けているが、対照的に世界の人々のウェルビーイング実感は右肩下がりとなっている。

「これは、成長の果実が公平に分配されていないことを示唆しています」と石川代表理事は指摘。その上で、ウェルビーイング実感の低下が、欧州やアフリカで社会的混乱に結び付いた事例を紹介し、「社会のウェルビーイング悪化は国のリスク、社員のウェルビーイング悪化は企業のリスクとなる可能性があります」と警鐘を鳴らした。

 では、日本のウェルビーイング実感はどうなっているのか。

 石川代表理事は、日本人のウェルビーイング(生活満足度)が年々下がり続けていることを指摘。その上で、ウェルビーイングを改善するには「働き方や生き方に十分な選択肢があり、自己決定できるような世の中や会社にすることが大切です」と研究の結果を紹介した。

 具体的には、育児休業制度の充実やリモートワークの容認といった「働きやすい環境」を整えることが、その第一歩になると指摘。また、社会に対しては「女性の活躍やセクシュアルマイノリティー、移民などが受け入れられやすい世の中にして、あらゆる人が居場所を見つけやすい社会にすることも重要です」と語った。

 およそ3時間に及んだビジネスフォーラムは、時間がたつのを忘れるほどの熱気に包まれたまま幕を閉じた。

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