左から、JTB ビジネスソリューション事業本部 マーケティングチーム 今井 希氏、森 淳マーケティング担当マネージャー、同事業本部 事業推進チーム 安達原祥子グループリーダー、野沢真衣グループリーダー (2024年1月15日時点)

今、世界的に注目されている「人的資本経営」。その支援を手掛けるJTBは、「EVP(Employee Value Proposition=社員が共感できる、その企業で働く価値の提案)」こそが鍵を握ると考え、さまざまなソリューションを提供している。旅行やイベント事業で培った体験価値の提案を基に、EVP経営支援のトップランナーを目指すJTBの狙いと、具体的な取り組みをレポートする。

「楽しみながら行動変容を促してくれる」と高評価のJTB体験型コンテンツ

 山梨県にある河口湖畔の森の中、ある企業の社員たちがチームビルディングに取り組んでいる。アクティビティは「ラインナップ」と呼ばれるゲーム。数人が目隠しをして丸太の上に乗り、出されたお題に合わせて並び順を変えていく。お題はクリアするごとに難易度が上がる。社員たちは「見える・聞く・話す」のスキルを封印される中で、なんとかコミュニケーションを図ろうと知恵を絞る。彼らは無意識に、自立とチームワークの本質に向き合っているのだ。

アウトドア体験「アクティビティ」の一つ「ラインナップ」の様子(写真はイメージ)

 これはJTBが提供する、「7つの習慣®Outdoor」というオリジナルの野外体験型研修プログラムの一場面。初めのうちは気が乗らなそうに見えていた社員たちも、日常から離れた自然の中で次第に表情がほころび始め、やがて現場は和気あいあいとした空気に包まれていく。個人としてまたはチームとして、失敗や挫折、成功を体験するたびに、感情の起伏が表れ、時に歓声を上げながら、仲間たちと「感動」を共有するようになる。

「私たちは現場で、参加されている方々の表情が明らかに変わり、エンゲージメントが高まる瞬間を幾度も目撃しています。お客さまからは、私たちの研修プログラムは“楽しみながら行動変容を促してくれる”と評価されています。机上の空論ではなく、社員たちの内面をダイナミックに動かす。楽しいからこそ、本人たちも納得してプログラムに取り組む。それが私たちの提供している、EVP(Employee Value Proposition=社員が共感できる、その企業で働く価値の提案)プログラムの最大の特長なのです」

 JTBビジネスソリューション事業本部事業推進チームの安達原祥子グループリーダーはそう説明する。

 そもそも、なぜ旅行を手掛けるJTBが“意外”とも思える人的資本経営支援ソリューションに乗り出したのか。次ページからは、JTBがこのビジネスに乗り出したきっかけと、同社独自のEVPソリューションを詳しく紹介する。