リテール(ロケーションオーナー)向けに店舗内装、サイン・ディスプレイ、コンサルティングサービスなどを手掛けるLMIグループの新規事業であるリテールメディア事業が急成長している。中でも注目を集めているのが、2023年11月にリリースしたばかりの「AdCoinz(アドコインズ)」だ。AI(人工知能)カメラを搭載したデジタルサイネージ型の新しいメディアだが、広告主、リテール(店舗)、消費者のいずれにも従来にはなかった新たな価値を提供するものとして期待が高まっている。
「三方良し」を実現する新しいリテールメディア
大手カラオケチェーンの都内のとある店舗の店頭に、大型のデジタルサイネージ(電子看板)が設置されている。大手ファストフード店の広告が表示されているが、それだけではない。広告を見た消費者が広告に掲載されているQRコードを読み取り、ファストフード店のサービスに登録すると、目の前のカラオケ店で使用できる割引クーポンも獲得できるのだ。
LMIグループが提供する「AdCoinz(アドコインズ)」と呼ばれるサービスだ。従来のデジタルサイネージの域を超えた、新たなリテールメディア(小売店における広告プラットフォーム)である。同社取締役副社長共同創業者兼リテールメディア部部長の望田竜太氏は次のように語る。
取締役副社長 共同創業者 兼リテールメディア部部長
望田 竜太 氏
「大きな特長の一つは、リワード(報酬)を提供することでホットリード(有望な見込み客)を獲得できることです。カラオケ店の店頭で割引クーポンを配布し店内への誘導を促進することもできます。また、ファストフード店のクーポンを配布すれば、カラオケを楽しみながらデリバリーサービスを利用するといった行動を促すこともできます」。消費者は広告主であるファストフード店のサービスにも登録するので、後日の働き掛けも可能だ。
最近では、リテールメディアに関心を持つ小売店も増えているが、設置のスペースの確保やコスト負担がネックだった。
「『AdCoinz』であれば、店頭の空きスペースにいつでもすぐに設置できます。設置に当たって、小売店の費用負担はありません。逆に、店頭や店内の空きスペースを貸していただけることに対するフィー(設置代)を当社からお支払いします。広告主、リテール(ロケーションオーナー)、そして消費者の『三方良し』を実現する新しいリテールメディアだと自負しています」と望田氏が語るように、リテール、広告主にとってはリスクやコストを抑えながらリワード提供型広告を展開できるという大きなメリットがある。
「AdCoinz」はこのように従来の課題を解決するだけでなく、AIカメラを搭載することで、従来のデジタルサイネージとは全く次元の違う付加価値の高い情報をもたらしてくれるという。次ページではAIカメラでどんなことが可能になるのか、売り上げを大幅に伸ばした大手シューズメーカーの旗艦店の成功事例を基に詳しく説明する。