「当社では『KDDI AI-Chat』という、万全なセキュリティを施したChatGPTの社内版を開発し、グループ全体で約1万人の社員が自由に使えるようにしました。さらに、全社員を対象として、プロンプトエンジニアリング(生成AIに適切な指示や質問を与えるための技術)を学ぶための研修も実施しています」と木村センター長は語る。
部門や担当の異なる社員が、それぞれの日常業務に当てはめながら試行錯誤を重ねることで、さまざまな活用例が生まれているようだ。
「かつては1日がかりだったプログラミングが、2~3時間で済むようになったという声も届いていますし、集計が難しい自由記述方式のアンケートの調査結果が効率よくまとめられたという活用例もあります。良い活用例が横展開され、そこからさらなる活用のアイデアが生まれるという好循環を期待しています」(木村センター長)
社内コンテストの実施や全社員向けの「生成AI専門研修」を新設
社員による利活用の輪を広げるため、KGAは生成AIを使った業務効率化を競い合う「社内コンテスト」も実施している。
木村センター長によると、エントリーされる候補の中には、意外な使い方をしている活用例も多いそうだ。
「例えば、面接の日程調整に生成AIを活用した例がありました。どちらかといえば生成AIには苦手な作業ではないかと思っていたのですが、プロンプト(問い掛け)に工夫を凝らせば、意外とできるものなのだという発見がありました」(木村センター長)
生成AIに企画や文案などのアイデア出しをしてもらうという事例もある。複数のペルソナ(架空の人物像)を設定し、それぞれの立場から問いを投げ掛けると、多様な答えが得られることが分かってきた。コンテストの実施によって、「こんな使い方もあるのか!」という驚きが社内に広がり、「もっと創意工夫を凝らしてみよう」という意識が根付くことを木村センター長は期待しているようだ。
生成AIの社内利活用を促すには、関連する知識やスキルを備えた人財の育成も不可欠だ。 KDDIは、DX人財を育成するための社内大学「KDDI DX University」を運営しているが、そのカリキュラムの一つとして生成AI専門研修を新設した。
先ほど紹介した全社員を対象とする基礎研修だけでなく、より専門的な知識やスキルが習得できる学習機会も設け、生成AI人財の幅に厚みを持たせていきたい考えだ。
これらの施策によって、現在では全社員の7割以上が業務で生成AIを活用するようになっている(23年12月自社内アンケートより)との結果も出ている。