あらゆる法人向けサービスに生成AIを溶け込ませたい
繰り返し述べてきたように、KGAによる「生成AIの社内利活用」プロジェクトは、得られた知見やノウハウを法人顧客にソリューションとして提供することを目標としている。
法人の顧客との接点として、それらの知見やノウハウを提供する役割を果たしているのが、同社のソリューション推進本部だ。
「社内利活用の成果を基に、お客さまごとに適した生成AIの活用方法を提案する一方、お客さまが抱える課題や使い方に関する相談をKGAにフィードバックして、解決策を一緒に検討しています」と語るのは、同社ソリューション推進本部 クラウドサービス推進部副部長兼ゼロトラスト推進部副部長の政木孝正氏である。
ソリューション推進本部 クラウドサービス推進部
兼 ゼロトラスト推進部
政木孝正副部長
ソリューション推進本部は、法人顧客向け生成AIソリューションの第1弾として、23年9月に米マイクロソフトの生成AIサービス「Azure OpenAI Service」をリリースしている。KDDIが社内用として開発・利用して得た知見を生かし、顧客のサービス導入や活用を支援していく。
「社内利活用で効果が確認されたプロンプトをテンプレート化するなど、プロジェクトの成果がパッケージングされています。KDDIの専用回線とセットで提供しているので、安全・安心にご利用いただけるのもメリットです」(政木副部長)
24年2月には、顧客の企業内データを取り込み、生成AIと連携させる支援を新たに開始した(※支援内容はKDDIの取り組みや事例を交えて、KDDI主催オンラインセミナーにて分かりやすく紹介予定)。
KDDIでは、「生成AIそのものをサービス化する」だけではなく、「既存の通信サービスに生成AIを組み込んで提供する」ことにも挑戦している。
具体的には電話の音声データをAIがテキスト化する「KDDI Voice Viewer」というサービスがあり、そこでテキスト化された内容を生成AIが要約するという新しい機能の提供も始まっている。
生成AI利活用の知見やノウハウを顧客へつないでいく
プロジェクトのスタートから間もなく1年が経過しようとしているが、「これまでの取り組みを通じて、見えてきた課題も幾つかあります」と木村センター長は明かす。
例えば、既存システムに生成AIを連携していく取り組みでは「対象となる既存システムがいずれも大掛かりなので、生成AIを組み込む作業も大規模なものにならざるを得ない」(木村センター長)
経理や購買、人事などのシステムは、いずれも基幹系なので、アドオン(機能の追加)によって不具合が生じることは許されない。しかも、組み込み作業が大掛かりになれば、開発コストもかかる。「ROI(投資対効果)を高めるためにも、生成AIを組み込むことで大きな業務改善が期待できるシステムを選別し、優先順位付けをしながら開発を進めていくのが望ましいということが分かってきました」と木村センター長は語る。
また、PoC(概念実証)を重ねる中で、既存の業務をどこまで生成AIに任せられるのか、という点も見えてきた。
「技術の進歩とともに、生成AIで実現できることはどんどん増えていくはずですが、現時点での『できること』『できないこと』をしっかりと見極め、使い分けることも重要だと分かりました。こうした知見も、当社がお客さまにソリューションを提供する際に役立てたいと思っています」(木村センター長)
「社内プロジェクトの成果を速やかに反映しながら、なるべく多くのサービスやソリューションをリリースしていきたい。ゆくゆくは、あらゆる法人向けサービスに生成AIを溶け込ませ、無意識のうちに利活用できる環境を提供するのが目標です」と政木副部長は語る。
木村センター長も、「生成AIは、人財不足という日本の社会課題を解決する手段の一つとして、今後ますます活用が広がるはずです。課題解決に貢献するため、KDDIは生成AI利活用の知見やノウハウをさらに蓄積し、より多くのソリューションの開発に努めていきます」と抱負を語った。
KDDI株式会社
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