耐震性不足や老朽化
高経年は課題が多い

 この改正の背景には、なかなか進まない高経年マンションの建替えや耐震補強、大規模修繕の問題がある。重水所長は、「築40年超の旧耐震マンションは約103万戸(国土交通省)あるといわれています。棟数では、全国で1万棟以上あるでしょう」と言う。

 老朽化したマンションは、今の生活基準にアップデートする「改修」どころか、以前の状態に戻す「修繕」も難しいと、同研究所の花房奈々副所長は言う。「高経年マンションの多くは、設計段階でメンテナンスが考慮されていません。そのため、壁や天井を壊さなければ給排水管の更新工事ができない建物も少なくない。一時退去が必要な工事は実施しづらいでしょう」。また、エアコンなどの家電製品が増えて各戸の電気容量を上げたくても、マンション全体の電気容量に余力がなく断念するケースもある。

区分所有法改正を機に高経年マンション再生で資産価値向上に挑む(右)旭化成不動産レジデンス マンション建替え研究所
重水丈人 所長

(左)旭化成不動産レジデンス マンション建替え研究所
花房奈々 副所長

「高経年マンションでは、給排水管の老朽化、電気関係の課題は、ほぼ同時に発生します。大規模修繕で対応できるのなら環境負荷の面でも好ましいのですが、費用をかけても数十年前の初期の状態に戻すことしかできません」(重水所長)。改修を検討すれば、「工事費が高騰しているため、大きな費用がかかります」(花房副所長)。結局は、修繕も改修もままならない。