所有者が住まない
好立地故の課題

 建替えについても費用がネックになり、全国のマンション建替え件数は、累計で282件・約2万3000戸(国交省調査、23年3月時点)にとどまる。旭化成不動産レジデンスは、これまで48件の建替え(23年12月着工ベース)に携わり、特に都心5区に集中している。その豊富な実績と知見から、重水所長は、建替えが進まない原因として、根底に費用負担などの実情があるとしながら、「都心5区でも1400棟以上の旧耐震マンションがある中、特に好立地マンションは、現状のままでも部屋や店舗を賃貸に出せば収益が得られる」ことを挙げる。「終の棲家として居住している所有者と賃貸に出している所有者では、管理や将来に対する考え方が大きく違います」(花房副所長)。

 マンション建替え研究所が、建替え事例からまとめたレポートによれば、所有者本人が居住する内部居住と居住していない外部居住の比率は、およそ45対55と、賃貸物件や空き家になっているケースが多い。居住する所有者にしても、70歳以上が41%を占める。これでは修繕積立金の値上げは難しいし、その先にあるマンション再生に向けた合意形成が難航することは容易に想像できる。

マンション建替え研究所では、これまでの建替え実績を基に、調査・分析レポートを作成。管理組合や区分所有者向けセミナーや勉強会を開催し、配布している

 しかし、マンションの資産価値は、年々下がっていくし、災害時の危険度も増していく。重水所長は、「今回の改正を機会に、資産価値を最大化するマンション再生を考えてほしい」と言う。建替え決議や敷地売却の決議が通りやすくなっただけでなく、同研究所には、隣地との共同建替えや補助金の利用などさまざまな建替えノウハウがある。一棟一棟さまざまに異なる状況に対応してきた経験もある。そうした建替えのプロセスや実務に携わってきた建替えの専門家集団が調査や情報分析した結果は、きっと頼りになるはずだ。

 高経年マンションだけでなく、3回目、4回目の大規模修繕を検討している管理組合も、専門家の知見をフルに活用して、資産価値最大化を実現するマンション再生の準備を始めるべきだろう。

●問い合わせ先
旭化成不動産レジデンス株式会社
マンション建替え研究所
〒101-8101 東京都千代田区神田神保町1-105 神保町三井ビルディング5階
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