“ハコ貸し”からの脱却を模索する

 都市開発事業の強化とともに、近年、同社が力を入れているのが、イノベーションや新しい働き方を促すオフィス創りの取り組みである。

 16年には、ベンチャー企業や大手企業、自治体、教育・研究機関などの協業・共創を促すオープンイノベーションオフィス「SENQ(センク)」を開設。現在、都内に6拠点を展開する。

 また、20年には「『はたらく』を解き放つ」をコンセプトとする中規模オフィスビル「REVZO(レブゾ)」の供給を開始した。今どきのオフィスでは珍しい自由に開閉できる窓や、出入りも可能な植栽付きの各階バルコニーなど、五感を刺激する仕様を導入したユニークなオフィスビルだ。今年は木造REVZOの開発も予定している。

 さらに同社は、社内において「新しいオフィスの在り方」を探る実証実験を進めている。

 きっかけは、「オフィスに求められる価値の変化」であった。

「従来起こっていた働き方の多様化やデジタル化の進展に加え、コロナ禍に伴う在宅勤務の定着によって、出社することの意義が改めて見直され、『対面価値を最大化』することが企業の新たな課題になりつつあります。従来のような“ハコ貸し”から脱却すべく、付加価値のあるオフィスの在り方を自分たちで探ってみることにしました」と三宅社長。

 若手・中堅社員が中心となって創った施設の名称は「NAKANIWA」。“中庭”の心地よさと、居心地の良い空間の「ナカ」に生まれる「ワ」(和やかさ、人の輪、自然環境との循環)という意味が込められているという。

若手・中堅クラスの自由で柔軟な発想が大事だと考え、「NAKANIWA」創りは若手社員に全て任せたと語る三宅社長。

 ワークシーンに沿って四つのエリアに区分されたフロア内は、自然とのつながりを重視するバイオフィリックデザインを採用し、保有林の間伐材を建材や家具に使用している。オフィス空間というよりも、まるで森の中にいるような雰囲気だ。

「健康食の提供や、社員研修、交流イベントを実施するなど、コーポレート部門も人的資本経営推進の一環として、いろいろな実験を『NAKANIWA』で行っています。テナントさまへのご提案やCRE戦略支援などのサービスにも結び付けたい」(三宅社長)

 22年の就任以来、三宅社長は全物件と拠点を巡り、全部門との対話を続けているという。

「ステークホルダー経営もサステナビリティ経営も全ての出発点は現地・現場、社員とのコミュニケーション。頼もしい社員たちと共に、動き、挑戦していきます」と抱負を語った。

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