経営手腕を発揮でき
ガバナンスに配慮した
条件での契約
――セキドはコロナ禍の時期に非常に苦しい経営をしたと伺っています。
関戸 まず、新型コロナが流行する直前の19年10月、消費税率が8%から10%に引き上げられたことが売り上げに大きなダメージをもたらしました。同年12月から翌年1月までの売り上げが、前年同期比74%まで落ち込んでしまったのです。
1月末に迫っていた借り入れの返済など、社長に就任して以来、最悪といっていいほどの危機に直面しました。それに追い打ちをかけるように、コロナ禍が発生したわけです。
資金を工面するため複数のファンドと対話したのですが、いずれも条件的にいかがなものかという感じでした。そこで、付き合いが続いていたラーチ会長のエボリューションと2度目のワラント契約を結ばせてもらったのです。20年5月のことでした。
――どのような条件で契約を締結したのですか?
関戸「原則として権利は毎月行使するが、必要がなければ、いつでも行使停止を要求して構わない。また、セキドが要求するのなら、いつでも契約そのものを停止できる」というものです。
これは、当社にとってはありがたい半面、エボリューションにとってはうまみのない内容です。そうした条件を、投資家側から提示してもらえたことに、ビジネスではありますが、友情を感じました。
ラーチ 創業家として、何が何でも会社を存続させようとする関戸社長の熱意と意思決定力の強さは十分に感じていました。ですから、社長が財務面での不安を過剰に抱えることなく、思う存分経営手腕を発揮できる条件にしたいと思ったのです。
また、インポートブランド商品の販売という事業内容は非常に理解しやすく、コロナ禍の困難さえ乗り越えれば、需要の回復とともに力強く成長できるはずだという確信も持っていました。
関戸 事業を評価していただいた上での財務面での安心感、いわば「セーフティーネット」が得られたことは、経営再構築に専念できる大きな力になりました。
加えて、当社のガバナンス維持にも十分に配慮してくださいました。仮にエボリューションが全ワラントを行使した場合、当社の株式価値は138%も希薄化してしまいます。その結果、数十億円規模に上る「セーフティーネット」を得る代償として、株主の皆さまからの信頼を失ってしまうわけです。
ですから、「いつでも行使停止を要求できる」という条件には、感謝しかありません。