生産現場に行くと、技術力の高さを目の当たりにして感動します。しかし、そんな現場にも困り事は日々発生しているんですよね。
生産現場と密に連携しながら、共に課題に臨む姿勢を大切にしたいと思っています。100年超の長きにわたり、TOTOの成長をけん引してきた現場への敬意を忘れてはなりませんし、現場の経験と勘が、シミュレーションツールによって実証されることも多々あります。
私たちは、生産現場に積極的に出向き、そういった情報も現場技術者としっかり共有するようにしています。
――なるほど。デジタル技術は生産現場に新たな視点を提示するためにあると思い込んでいましたが、現場の経験や勘が間違っていなかったと伝えるためにも使える。
こうした深いコミュニケーションが、現場からのさらなる信頼獲得にもつながるのだと実感しています。実際に足元では、デジタル活用の成功事例が積み上がったことも相まって、国内外から対応し切れないほど多くの業務改善依頼を頂けるようになりました。
――衛陶事業推進室の立ち上げからわずか3年です。ちなみに、成功事例にはどんなものがありますか。
先ほどお話しした配管口径の調整では、口径を小さくすることによって、歩留まりの迅速な改善につなげることができました。具体的には、泥の衝突の衝撃を小さくするために、生産現場の経験と勘をシミュレーションツールでサポートし、適切な口径の大きさを割り出していった形です。
日々新しいことに挑戦しています。経験と勘を基にした生産現場の思想と、デジタル技術を基にした私たちの思想が合致したときに、ブレークスルーが起こる。ものづくりのDXは本当に面白いです。
――角樋さんは17年入社です。TOTOの若手従業員の“発言権”は、実際のところどのくらいありますか。
チームの人たちとは非常にフランクにアイデアを出し合えています。私が所属するTOTOサニテクノ技術部の吉本(弘史部長)が、「デジタル技術を活用して新しいものづくりを創造するなんて『未知の領域』だ! 正解は分からない。だから、あらゆる可能性を排除してはいけない」というスタンスを取っているんですよね。
DXに携わっていると柔軟性や発想力の高さが重要だとつくづく感じるので、「いろいろなアプローチをみんなで考えようぜ」という雰囲気に助けられています。
吉本は、まさに「職人技」を磨いてきた生産現場出身者です。現場を長く経験しないと知り得ない製造過程の暗黙の了解なども知り尽くしているので、チームの議論も自然に深まります。
チーム以外の人と議論することも多いですね。TOTOの戦略は現場から生まれていると言っても過言ではないので、DXの“タネ”も現場にあることがほとんど。DXを実現させるにしても、社内の「その道のプロ」の協力を仰ぐことが欠かせません。
だから生産現場はもちろん、設計や研究などの現場もしょっちゅう回っています。「何か困っていることはないですか」、あるいは「こんなことができるようになったらいいけど、どうすれば実現しますかね?」といった具合に(笑)。社内人脈がだいぶ広がりました。学びが多い環境です。
――意外と柔軟な組織なんですね。TOTOは匠の集団なので、もっとかたくなな人が多いのかと思っていました。
社是にある「良品と均質」をひたむきに追究している会社なのです(下図参照)。同じ陶器でも、一点物の工芸品と違って、トイレを作るにはそれを追究するプライドが必要で。私自身にも、良品でありながら均質であるという、衛生陶器にとって最も難しい製造課題を、DXによって解決していきたいという思いが強くあります。
あと、みんなそもそもトイレが大好きです!(笑)。私は買い物に行っても旅行に行ってもトイレを確認するのが習慣で、TOTO製だった場合は製造工場まで調べます。社内の人と飲みに行くと、同僚たちもお店のトイレを喜々としてチェックしています。
トイレってすごいですよね。あらゆる人の一生涯にわたり、価値を提供し続けることができる。私は大学で生命医科学部に在籍していたのですが、トイレのように誰もが安心して使える普遍性を備え、かつ最先端技術も搭載している製品は珍しいと感じてTOTOに入社しました。
――ちなみに、TOTOで最も好きなトイレはどれですか。
TOTOの創立100周年の年であり、私の入社年でもある17年に発売された「ネオレストNX」です! あの美しく複雑な流線形のフォルムを均質に作れるのはTOTOだからこそ。「新しい技術やお客さまのニーズに粘り強く、真剣に対応し、良品を世に送り出す」という意志さえにじみ出て見えます。
――節水、温水洗浄便座、タンクレス、防汚……。トイレは進化し尽くしたようにも思えるのですが、今後TOTOはさらに変革を起こすことができるでしょうか。
デジタル技術の活用によって、生産現場が認識していない新たな不良要因の究明など、さまざまな未来が模索されるようになっています。また、社内を回っていると、高い技術力をベースにしたユニークな発想や、新たな価値創造への熱い思いに出くわすことがたくさんあるんですよね。デジタル技術は、そうした社内の発想や思いを実現させるための体制も後押しできると思っています。
この先、TOTOではまだまだ面白いことが起こるはず。現場に根差すTOTO流DXの発展に挑み、私自身もワクワクしながら、「さすがTOTO!」と言われるようなものづくりを支えていきたいです。
【参考情報】
TOTOの採用情報サイト