2013年3月24日、東京の丸ビルホールでアジア投資特別セミナー「アジアが世界を動かす時代」(主催・アイザワ証券、協力・ダイヤモンド社クロスメディア事業局)が開催された。その模様をお伝えする。
第1部 | 基調講演「アジア経済の今」 シンクタンク・ソフィアバンク代表 藤沢久美氏 |
アジアの存在感と可能性が
年々大きくなっている
藤沢久美氏
私は2007年にダボス会議を主催する世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダー」に選出され、同会議に参加してきました。かつては、欧米が世界のルールを決めていましたが、08年のリーマンショック以降は、世界の主要国はG7からG20、G60となり、昨年はGゼロ、つまり、どの国も世界のルールを決めるリーダーにはなれないとされました。そのなかで、地域ブロックが重視されています。
ダボス会議には、地域ごとの会議もあります。開催場所は、今後世界から注目されるであろう国が選ばれますが、中南米や中東、アフリカは2~3ヵ国間をローテーションしている一方、アジアは毎年変わるんです。アジアの新興国は、裾野が広く、かつ経済成長が着実に進んでいることの表れでしょう。今後の世界経済を占う場とされるダボス会議でも、アジア地域の存在感と可能性が年々増しているのです。
地域のハブ(仲介国)
となる国に注目すべき
今後、世界経済の中心は、北半球から南半球に移ると見られています。その過程で、どの国がハブ、つまり北から南への橋渡しの仲介役になるかが重要です。
私自身、かつては運用会社に所属し、アジア株ファンドの運用にも関わってきました。当時、マクロ経済指標などからはアジアの可能性が感じられたものの、実感は湧きにくかった。そこで参考にしたのが、アジアに進出する日本企業の経営者の意見でした。海外進出の成否は企業の存続も、社員やその家族の将来も左右するため、慎重にならざるをえないからです。その意見は、株式投資をする際に有益かつ、安心を担保する材料にもなりうると考えたんです。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査」(2012年調査)によると、例えば、タイは、大企業と中小企業の進出数がほぼ同数で、進出が一巡していることから、成長は期待できるものの安定感がある、つまり進出リスクは小さくなっていると考えられます。さらに、今後の成長が期待されるベトナムやカンボジア、ラオス、ミャンマーなどメコン川流域の国々に進出する際の窓口としても重要なポジションにあり、仲介国としても成長が期待できます。
タイはメコン川流域、
インドネシアはイスラム圏へのハブ
インドネシアも仲介国として注目です。ここ数年、毎年ドバイとサウジアラビアへ行き、定点観測をしていますが、消費も伸び、サウジを中心に女性の社会進出も進む中東は、巨大な消費市場として注目できます。でも、イスラム圏でもある中東への進出は、イスラム教が障壁になります。食品や医薬品を輸出する場合、「ハラール」というイスラム教のルールに則ったものでなければなりませんが、サウジやドバイでハラール認証を申請すると非常に時間がかかってしまう。そこで、イスラム教国で、かつ、国際的な視野も持ったインドネシアに進出し、ハラール認証を取得して事業の基礎を固めるという方策をとるわけです。
タイがメコン川流域地域への窓口ならば、インドネシアはイスラム圏への窓口になる。インドネシア自体も人々が豊かになる過程にあり、消費市場としても期待できることから、食品や小売りなどのセクターが注目されています。タイの場合は、メコン川流域の国々でインフラが未整備であることから、インフラを支える企業に注目が集まるでしょう。
今後、世界の中でアジアのポジションはさらに重要になります。その意味でも、今はアジア投資を始める好機といえるのです。