日本では欲しいと思った再エネを
思った通りに調達できるわけではない

 前述した通り、再エネの調達手法は複数存在し(下図参照)、手法によって“手軽さ”やコスト面などには一長一短がある。

 例えば再エネを一定量以上、安定的に調達したいと考えるならば、「コーポレートPPA(電力購入契約)」が有効な手法の代表格だ。発電事業者と直接受電契約を結び、特定の発電所から再エネを購入する手法で、新設の発電プロジェクトに先行投資をするからこそボリュームを確保できる。

 半面、PPAは15~20年の長期・固定契約であることがほとんどなので、再エネの市場価格が落ち込んだ場合は「高値づかみ」を強いられるといったリスクがある。再エネ調達の実行の壁をクリアするためには、まずはこうした各手法におけるメリット・デメリットの把握が必要だ。

 ただし、それだけでは足りない。再エネの調達環境の変化を敏感に見極め、計画を実現するための最善策を、状況に応じて探し当てるノウハウも必須となる。国の電源構成、送電網整備、事業助成・税制などのエネルギー政策は、それに関わる事業者の意向のみならず、国内政治や外交、世論などの複雑な要因にも大きく左右される。再エネ調達にしても、実行性のある手法やその組み合わせは、常に変化するものなのだ。

 実際、再エネも原発の再稼働と同様、肝心の発電所の建設・稼働計画からして予定通りに進まないことが多く、年次ごとの供給量が読みづらい。原発の再稼働によって、予定されていた周辺の再エネ発電所の開発がストップすることもある。前述したように原発由来の電力は安いので、地域内の再エネの価格競争力が低下するからだ。

 国内の再エネ導入の今後の鍵となる洋上風力発電を巡っては、「海外ではインフレや資材高に伴う予想外のコストアップに見舞われ、入札から撤退したり、落札したにもかかわらず開発中止を決めたりする発電事業者が出てきています。国内でも同様の事象が起きないとはいえません」(六田氏)。太陽光発電所や陸上風力発電所の建設は、環境保護の観点から慎重論が強まり、計画の遅れや中止に追い込まれる例が国内でも増えている。

 企業が再エネを安価かつ安定的に調達するには、再エネの供給量増加が不可欠だ。再エネの開発に想定外のブレーキがかかれば、再エネの争奪戦が一層激化する恐れがある。国土が狭く、再エネ発電の適地が限られる日本においては特に、欲しいと思った再エネを思った通りに調達できるわけではないと肝に銘じるべきだ。

 KPMG FASはもともと、発電・送配電や電力小売事業者をはじめとした電力供給サイドに対する支援を長く行ってきた。だからこそ業界への深いインサイトがあり、供給サイドの水面下の動きや各国の再エネ政策の変化を迅速にキャッチすることができる。そうした長年の実績を背景に、需要サイドの企業に対しても、納得感のある再エネ調達計画の策定と、確度の高い計画実行手法の選定を一気通貫にサポートする。

 近年は、化石燃料の価格が高騰。再エネ調達を、電力調達価格のボラティリティーを抑えるための選択肢の一つと考える企業も増えつつある。KPMG FASは再エネ調達支援サービスによって、企業の脱炭素目標の達成はもちろん、その国内外における競争力強化を後押ししていく。

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