リーダーとして成長するにはどんな「学び」を実践すべきかHiRAKU 代表取締役/元 ラグビー日本代表 キャプテン 廣瀬俊朗氏
大阪府出身。5歳からラグビーを始め、東芝ブレイブルーパスではキャプテンとして日本一を達成、2007年には日本代表選手に選出され、2012年から2年間キャプテンを務めた。現役引退後、ビジネス・ブレークスルー大学大学院にてMBAを取得。2019年、HiRAKU設立。現在、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科にて履修中。著書に『ラグビー質的観戦入門』(KADOKAWA)ほか多数。

廣瀬 ラグビーのような団体競技では、「このチームのために」「仲間たちのために」という意識を持てるかによって、練習への力の入れ方が大きく変わってきます。言い換えれば、人間関係をいかに良好にできるかが、選手の能力向上や、チーム全体としての力の底上げに関わってくるのです。

飯田 個人と組織がともに成長するためには、何より人間関係の土台づくりが大切だということですね。

廣瀬 その土台づくりが、リーダーの重要な役割の一つだといえます。僕の場合、年齢や国籍に関係なく、どの選手でも気軽に何でも話せるような環境づくりを心掛けました。

 若い選手に対しては、「最近どう?」「何の練習してるの?」とオープンマインドに声をかけ、外国人選手には、それぞれの出身国の言葉であいさつをするといったようにです。

 もう一つ心掛けたのは、チームにおける選手ごとの役割や居場所を一緒につくっていくこと。「あなたがここにいてくれて助かっている」「チームのためになっている」と伝えることが、選手のモチベーションにつながります。さらに、それぞれの役割に対する認識を選手同士が共有することで、チームとしての一体感が生まれるのです。

飯田 とはいえ、年齢や国籍が違えば価値観や考え方も大きく異なるはず。一体感を持たせるうえで、ご苦労はなかったですか。

廣瀬 選手ごとの意識の違いは、日本代表のキャプテンを務めていた時に、特に痛感しました。代表にまで選ばれた選手ばかりですから、それぞれ「自分のことは自分で決めたい」「個を尊重してほしい」という意識が非常に強かった。

 それでも、チームとして一つになれたのは、「Japan Way」(ボールを保持する時間を長くする日本独自のラグビースタイル)の実践という共通認識を持てたからです。個々の考え方やアプローチは多少違っても、チームとして目指す方向は一つだったので、おのずと一体感が生まれたのです。

「学び」は結果だけでなくプロセスも大事

飯田 よくわかりました。ところで、廣瀬さんはラグビーを引退後も大学院でMBAを取得するなど、「学び」を継続されています。

 そんな廣瀬さんに、ぜひ「大人として学び続けること」の大切さについて語っていただきたいですね。

 ちなみに、ベネッセが行った「社会人の学びに関する調査」では、回答者の約2人に1人が「直近1年間で学習していない」と答え、「何かやりたいけど、なかなか始められない」「何を学べばいいのかわからない」というモヤモヤを抱える人も多いことがわかりました。

 また、リスキリングについても、「会社から無理やり押しつけられている」「これまでの自分を否定されている」といったネガティブな感情を抱くビジネスパーソンが少なくないようです。

 一般にはそんな状況ですが、廣瀬さんが引退後も「学び」を続けているのはなぜでしょうか。

廣瀬 そもそも、学ぶのが好きなんでしょうね。見えなかったものが見えてきたり、違った視点が得られたりする感覚がとても好きなのです。

 それによって、できないことができるようになり、使う言葉が変わってくることに成長を実感します。なので、「もっと学びたい」と思うわけです。