効果検証も可能な「A&Iエンゲージメント標準調査」を開発

 一方、従業員エンゲージメント指標については、人事コンサルティングを手掛けるアジャイルHRと共同開発したサーベイ「A&Iエンゲージメント標準調査」を提供している。

「働く意欲が高くても、企業が目指す方向性(MVV)と違っていては意味がありません。そのため、従業員エンゲージメントを『ワークエンゲージメント+組織コミットメント』と捉え、仕事だけでなく、企業全体を含む、より広範な対象に向けられた愛着や思い入れの強さを測っています」(橋本氏)

 具体的には、ワークエンゲージメントを「活力・熱意・没頭という言葉に集約される充実感を有している、働く個人の心理状態」、組織コミットメントを「組織の目標・規範・価値観の受け入れ、組織のために働きたいとする積極的意欲、組織にとどまりたいという強い願望によって特徴づけられる情緒的な愛着」と定義している。

 さらに、エンゲージメントの向上策を検討するために必要な「エンゲージメントに影響を及ぼす要因」と、施策の実施後、成果に結び付く意識や行動の変化が生じているかどうかを把握するために必要な「エンゲージメントが影響を及ぼすアウトカム(成果を生む意識・行動)」についても測定することが可能だ(下図参照)。

 サーベイ実施後の結果分析は、人事領域のプロフェッショナルであるアジャイルHRとデータ分析のプロフェッショナルであるインテージが行っている。例えば、下記のようなサーベイの結果とエンゲージメント向上のための支援策が考えられる。

◎サーベイ結果仕事レベルでの動機付けが不足している→ ◎エンゲージメント向上策「1on1の導入による管理職層のピープルマネジメント力の向上」「ビジョンを実現するための組織・メンバーの目標をOKR(企業・チーム・個人の目標をリンクさせる目標管理方法)として設定して組織を運営」など

◎サーベイ結果価値観・ビジョンの共有が不足している→ ◎エンゲージメント向上策「組織のメンバーが自分自身のビジョンを考えるキャリア研修の機会を提供」「組織のMVVを明確にして360度フィードバックで浸透」など

 設問については、33問という最低限の問数に整理。回答する従業員の負担を最小限に抑えながらも、必要な情報が得られるように設計されている。信頼性が気になるところだが、統計的・学術的な裏付けのあるデータとして利用できるように、研究と実証を積み重ねてきたという。厚生労働省の新職業性ストレス簡易調査票や、アジャイルHRと東京大学の共同研究などに基づき、エンゲージメントに関する設問のロングリストを作成。その後、インテージが実地検証を何度も繰り返し、A&Iエンゲージメント標準調査を完成させている。もちろん、人的資本の情報開示に利用することも可能だ。

 実は、リリース後1年で10社超が導入しているという。

「多くは従業員満足度調査からA&Iエンゲージメント標準調査に切り替えたケースです。満足度だけでなく、組織のために働きたいという意欲や、エンゲージメントに影響を及ぼす要因などが測定できる点を高く評価していただいています」(橋本氏)

 今後、データが積み上がってくれば、顧客エンゲージメント指標と連携させて分析することも可能になるという。

 例えば、「従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントが共に高い」という店舗からはベストプラクティスの抽出が期待できる。また、顧客エンゲージメントに差がある店舗の従業員エンゲージメントを比較し、EXの改善からCXの改善が期待できる。CXの向上策を講じていても顧客エンゲージメントが低い場合は、EXに根本的な原因があるかもしれない。このような分析が行えるのもCXとEXの改善を両輪で推進するメリットだろう。

人事部が収益向上に直結する施策を打てるようになる

 こうしたエンゲージメント指標を軸とした支援は、インテージの「CXマネジメント支援サービス」の一環だ。同サービスでは、CXマネジメントのプロセスを「問い直す」「生み出す・届ける」「磨き込む」の三つのフェーズに分け、CXデザイン(顧客体験の設計)やエンゲージメントデザイン(コミュニケーション戦略策定・実行支援)など八つの支援サービスを提供している(下図参照)。

 同社が長年にわたって培ってきたリサーチ力と分析力をEXの向上においても活用できるのは大きな魅力だ。

「CXとEXの向上を両輪で推進したいが、何から着手していいか分からないという場合は、CX向上であれば『CX Health Check』というCX起点での簡易リサーチを、EX向上であればA&Iエンゲージメント標準調査を試してみてはいかがでしょうか。これまで見えてこなかったCXやEXの新たな課題や改善策が見えてくると思います」(吉田氏)

 CXとEXの向上を同時に進めることによって、人事部が収益アップに直結する施策を打てるようになる点にも注目したい。マーケティング部と連携し、CXの向上に向けて強化すべき研修や感情的な価値をつくり出すための施策などについて検討してみてはどうか。

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