快適なトイレは従業員の定着率向上という
課題解決に大きな力を発揮する
竹内 さまざまな場所でトイレ環境の整備が進んできているのを感じますが、市場全体としてどのような意識の変化があるのでしょうか。トイレメーカーであるLIXILの飯野さん、いかがでしょうか。
飯野 駅やサービスエリアなど、さまざまな施設のトイレはより清潔になり、機能的にも進化しています。しかし物流・工場施設は旧来、男性中心の職場が多かったこともあり、男女共用しかないなど、女性用トイレの環境整備は後回しにされてきた歴史があります。ましてや、女性のニーズに細やかに対応するトイレなどは、近年でもあまり多くはないと思います。
竹内 先ほど女性のニーズに配慮したこだわりのトイレを拝見して、物流センターの旧来のイメージが刷新されました。ソフトバンクでは、そもそも雇用促進や職場環境改善に対し、どのような課題をお持ちだったのでしょうか。
池田 当社ではグループを挙げ、成長戦略の主軸に「人的資本」を据え、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を進めています。その一環として、先ほどご案内をした物流センターを整備しました。計画に際し、念頭に置いたのが「長く働いていただくために、どう環境を整備するか」でした。
近隣沿線には当社以外にも数多くの物流センターが点在します。さらに、市川の物流センターの主要業務は法人用のスマートフォンなどのスマートデバイスの初期設定から配送、保守対応までをサポートするフルフィルメントサービスで、細かい作業への慣れや適応力が求められる点も考慮する必要がありました。
沿線エリアの特徴も踏まえ、主婦の方や学生さんなどにもアピールするべく、通勤用シャトルバスの運行、リフレッシュスペースの環境整備と併せて、快適な女性用トイレの増設は最優先かつ最重要の検討項目でした。
竹内 従業員の定着率向上は、まさに今、多くの企業が取り組みを進めている喫緊の経営課題の一つですよね。その中で女性の雇用を増やし、長く働いていただく上で、日々利用するトイレ空間の整備に着手されたのは、女性の立場としてもうれしいですね。
飯野 「働きやすい職場環境を整備する」という強い意識を持って、ソフトバンクさまが女性用トイレの増設に取り組まれたのは、物流業界でも先進的といえるのではないでしょうか。
竹内 掛け声だけでなく、働いている方々を大切にしていこうという意志を感じますね。
飯野 LIXILでは、トイレの在り方が職場の環境というハード面だけでなく、従業員の心理的なソフト面も左右すると考えています。
実際、2022年にLIXILで実施したアンケート調査(上図参照、トイレメーカーであるLIXILの名前を伏せた上で実施)で、「オフィス環境で重視することは?」という問いに、全体で82%、女性だけでは87%の方がトイレを挙げています。トイレ環境が仕事の効率に与える影響についても、71%の方が「効率アップに影響する」と答え、特に「清潔さ」や「におい」を重視するという結果が明らかにされています。
竹内 職場のトイレへの関心が高まる時代にあって、ユニットタイプを選択された背景について伺えますか。
池田 当初、既設のトイレを施工した会社にトイレ増設を依頼したところ、工期が約1カ月かかり、しかもその間通路を封鎖するという条件付きでした。他のフロアにもトイレはありますが、休憩時間も限られている中、全従業員約200人の約半分を占める女性に大きな負担を強いてしまう。短工期で人員増減にも対応できるようなユニットタイプを模索していました。
竹内 そこから「withCUBE」を選ばれた決め手は何でしょう。
池田 最大の決め手は工期です。既存の部屋を活用でき、解体工事もなく、最短1日で設置できるのは大きな魅力でした。
設置後も各トイレユニットにキャスターが付いているため、移動・移転が簡単にでき、施設のレイアウトや従業員数・男女比率の変動に応じて増減可能なフレキシビリティー、さらに撤収時にトイレを解体する費用が軽減される点もポイントとなりました。