これまでオフィス出社の是非を問う議論では、「生産性」や「効率」を巡るものが多く見られた。しかし花田所長らが実施した「行きたくなるオフィス」を問う調査では、こうした議論を掘り下げるために役立つ興味深い声が得られた。
「調査インタビューの中で挙げられた行きたくなるオフィスの要素に『他者に優しくなれる』という回答があり、はっとしました。オンラインのコミュニケーションでは、“仲間であること”の意識醸成が難しく、他者理解が希薄になる場面が少なくありません。リアルなコミュニケーションを通して他者を理解し、感情や体験を共有することで、本音で話がしやすくなったり、仕事の手戻りも少なくなったりと、ストレスを軽減できます。ひいては生産性や効率性につながるのです」
行きたくなるオフィスが集う価値を高める
これまでもメンバー交流を促す場をオフィスにつくる取り組みは盛んに行われてきた。そして今、働き方の変化の中で、リラックスできる環境や居心地の良さがさらに求められるようになった。こうした要素は新しい価値を生むプロジェクトワークの成功にも効果があると花田所長は言う。「アイデアを出し合い、お互いの創造性やその評価を実感することは、モチベーションの向上・維持につながります」。
では、「行きたくなる」オフィスとは具体的にはどのようなものなのか。調査の結果、二つの軸で整理できることが分かった。一つ目の軸は、どんな仕事ができるか、メンバーとの交流や創造的な行為ができるかといった「仕事への取り組み」。二つ目の軸は、働きたい場所を選べる、リラックスできるといった行動面・心理面の「働きやすさ」だ。そして、さらに詳しく見ていくと、<図1>のように四つの要因に集約できることが分かったという。以下にそれぞれの要因を詳しく見ていこう。
<図1>
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①「自分の仕事に合った場所を選んで、効率的にふるまえること」
個人のワークスペースは、仕事の内容によって作業がしやすい場所を選べるかどうか。働く場所の「選択肢」があり、心身への負担を減らすことで効率的に働ける場所であることが重要だという。
②「リラックスして、発想を広げられること」
ソファ席や、観葉植物などの自然が感じられる環境によって、ストレスが低減し、アイデアを出しやすくなる。
③「メンバーとつながり安心できること」
ただメンバーと同じ空間にいてお互いの存在を感じられるだけで、落ち着いて仕事ができる。ゆとりのある空間であることも重要だ。
④「居心地よく、気持ちよく仕事ができること」
窓や照明などの光環境、色彩など、インテリアの雰囲気の良さがそうした環境づくりにつながる。