中古車売却に「セルカ」という新発想。“CtoBオークション”は、なぜ高値で売れるのか?クイック・ネットワークの田畑翔利(たばたしょうり)代表取締役社長(右)とスタッフ。神戸市の目抜き通り沿いに立つビル内の本社にて

“高値買い取り”をうたっているのに、時に買いたたかれることもあるという中古車買い取り専門店。営業電話が鳴りやまないウェブ経由の一括査定……。プロの業者相手に愛車を売る際にはストレスが付きものだった。ところが、「“CtoB”(※1)オークションの『セルカ(SellCa)』は違います」と、クイック・ネットワークの田畑翔利社長は胸を張る。顧客体験の向上を追求した中古車売却システムを紹介する。

 愛車を手放すときには幾つかのルートがある。どのルートがユーザーである売り手にとって最も良い値段が付くのだろうか。答えは、中古車の流通ルートを知ることで分かる。

 愛車買い取りオークション「セルカ(SellCa)」を運営するクイック・ネットワークの田畑翔利社長によると、「買い取られた車のほとんどはオートオークション(AA)に出品される」という。AAは誰でも参加できるネットオークションとは異なり、業者間オークションの会員資格を有する中古車業者しか参加できないBtoBの会員制オークションだ。

「中古車買い取り業者はAAでのおおよその落札金額を予測できるので、それよりも高値で買い取ることはまずありません。AAの落札相場から諸経費と自社の利益を差し引いた金額が買い取り金額の上限になります」

 また、中古車業者のセールストークに「自社で小売りをするため、高く買い取ることができる」というものがあるが、「もし本当にAAより高価で買い取るのであれば、その販売店はAAで仕入れたときよりも利益が減ることになる。経済合理性で考えるとそのようなことをする業者はいないと思います」と田畑社長は指摘する。

 故に、冒頭の問いへの答えは「業者が参加するオークションに出品する」だ。しかし、ユーザー個人がAAに参加することはできない。そこでクイック・ネットワークは2017年に消費者が企業に車を売る仲介をする“CtoBオークション”「セルカ」をスタートさせた。

「セルカ」には7700社(※2)のバイヤーが登録しており、ユーザーが直接出品した車を落札すべくネット上で競る。バイヤーから見た「セルカ」の利点は、出品者が個人という点。業者間で取引される(特に転々とした)車には瑕疵が隠れているリスクがあるが、個人が出品する「セルカ」なら良質な車を競り落とせる期待が持てる。

※1:CtoBは、Consumer to Businessの略。一般消費者が企業を対象・相手に行うビジネス・商取引形態 ※2:2024年6月末時点