企業版ふるさと納税は
CSRを意識した施策

eスポーツを通じたデジタル人材育成に、企業版ふるさと納税を活用 ~茨城県編~2021年7月、茨城県の実施する地方創生事業に対し、企業版ふるさと納税制度を活用した寄付金の贈呈式。左からサードウェーブ・尾崎健介社長(当時)、大井川和彦・茨城県知事、サードウェーブ・前田常務取締役(写真提供/茨城県)

 全高eも支援プログラムも同社の社会貢献活動の一環だが、前田常務が「よりCSR(企業の社会的責任)を意識した施策」と言うのが、「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)」(下記囲み参照)だ。同社は、多数の地方公共団体が策定したeスポーツ関連の「地方創生プロジェクト」に企業版ふるさと納税制度を活用して寄付をしている。「当社の寄付をどのように使うのかは、地方公共団体が決めます。それぞれの地方には、それぞれ特有の課題がある。寄付を課題解決の一助として使っていただき、デジタル人材育成に貢献できればいいと考えています」(前田常務)。

 同社は21年、同制度の初めての寄付先に茨城県を選んだ。19年の「いきいき茨城ゆめ国体」で国体史上初となるeスポーツ大会「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」を文化プログラムとして開催するなど、大井川和彦知事をはじめ、同県の「eスポーツに対する積極姿勢」に共感したからだと、前田常務は話す。

 では、茨城県側は同社の寄付をどう受け止めているのか。茨城県の大竹真貴(まさよし)産業戦略部長は、「行政リソースが限られている中で、ふるさと納税という形で民間企業に財源支援をしていただけるのはありがたい」と感謝を示す。

 県は寄付対象事業として大きく①新しい豊かさ、②新しい安心安全、③新しい人財育成、④新しい夢・希望を推進する事業を計画。サードウェーブが寄付の対象としたのは①を中心に③・④にも効果が及ぶeスポーツ環境の整備や産業を担う人材の育成を行う「いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト」だ。

企業版ふるさと納税とは
企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)は、地方公共団体が実施する「地方創生プロジェクト」に対して企業が寄付を行うことにより、地方への資金の流れを強化し、地方公共団体では資金集めに役立てられる税制度。この制度を利用した場合、企業は税制上の優遇措置を受けられ、損金算入による軽減効果(寄付額の約3割)に加え、税額控除(寄付額の最大6割)により、最大で寄付額の約9割が軽減される。企業にとっては節税と地域貢献の両立が可能となる。