デジタル人材育成と
新産業創出に活用
eスポーツに対する県の取り組みを大竹部長はこう話す。
「eスポーツは年齢・性別、居住地域を問わず参加でき、今後成長が期待される産業であることから、官民による『いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト推進協議会』を立ち上げ、産業化に向けた裾野の拡大やデジタルスキルを習得した人材育成などの取り組みを進めています」
eスポーツは認知度がまだ低く、単なるゲーム=遊びと捉えている人もいるため、県では正しく理解してもらう取り組みを続けている。県が主催した関連イベントは、23年だけでも40件を超え、約4400人の参加を得た。成果は着実に上がっていると大竹部長。
「例えば、NASEF JAPAN(国際教育eスポーツ連盟ネットワーク日本本部)に加盟する県内高校の数が21年は1校でしたが、3年ほどで28校(24年6月28日時点)に増えました。eスポーツへの理解が進んでいる証左です。また、高校生がゲームで農業を考え社会課題解決に挑む『Farmcraft(R)2023』では、世界中から多くのエントリーがある中、当県の高校生が世界3位を獲得するなど実績を上げています」
しかし、県が目指しているのは、優秀なプレーヤーの育成に限っているわけではない。
「eスポーツではイベントを企画・運営するプロデューサー的な役割、裏方としてイベントを支える役割といった幅広い役割を経験することができます。経験を通じて個々の適性や能力に合ったデジタル人材が育つことを期待しています。そのためにはサードウェーブさんのようなデジタル技術とeスポーツに深い知見とノウハウを持つ企業と、長い関係を築くことが重要なのです」(大竹部長)
その思いは同社も同じだ。前田常務は“寄付対効果”のような「KPI(重要業績評価指標)は定めていない」と力を込めて話す。地方が元気になれば将来、自分たちのビジネスも恩恵を受けるはず。だから企業版ふるさと納税を活用している。寄付先の地方公共団体から不登校の生徒がeスポーツに参加して社会とのつながりを持ち、不登校率が減少したという話を聞くと素直にうれしい、とも語る。
同社は寄付を通じて社会貢献を目指す姿勢が評価されて23年9月、茨城県より紺綬褒章の内申があり、日本国政府より褒状(賞状)が授与された。
短期的な見返りを求めるだけならば、企業版ふるさと納税よりももっと効率的なやり方があるはずだ。だが、同社の目は日本と業界の明るい未来に向いている。
株式会社サードウェーブ
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