工場を持たない「ファブレス」企業からの製造受託を目指す

 前述した田邑社長が力を入れている、「マーケットイン型」の製造業とは具体的にどのようなものなのだろうか。

「当社のグループにはFA機器製造の企業が多いのですが、装置を一度、製造・納入すると次にいつ発注が来るのかが分からないため、このプロダクトアウト型のアプローチだけでは売り上げが安定しません。そこで当社が目指しているのは、新しい製造業の形態『AMS(Anything Manufacturing Service)』です。これは顧客のニーズに沿ったあらゆる製品を、当社が独自に開発・設計した装置で量産して供給する製造受託サービスです。顧客は製造装置を持つ必要がなく、100%製造委託できます。それぞれが独自の技術を持つグループ企業のモノづくり力を結集すれば、製造装置の開発・設計から量産、梱包、デリバリーまで、スピーディーな対応が可能になります」(田邑社長)

 具体的な事例を挙げるとすれば、同様なビジネスモデルの台湾のフォックスコンだ。同社は米アップルのiPhoneを受託生産するなど、アップルのように工場や生産設備を持たずに外注先に製造を委託、自社は設計や開発に特化する「ファブレス」企業からの受注により成長している。

 製造の発注側は製造ラインを稼働させる装置や人材のコストを節約できるほか、市場の変化に素早く対応できるといったメリットから、国内の大手メーカーでもファブレスへのニーズが高まっているという。

事業承継に悩む中小企業30社超をM&Aで結集。グループ企業のそれぞれの強みを掛け合わせ世界へと挑む日本製造 田邑元基(たむらもとき)代表取締役社長
東芝、リクルート、佐川急便を経て、2009年非接触テクノロジー株式会社(現:株式会社HS technology) 創業。中小製造業の事業承継問題を具体的に解決すべく製造業の事業承継プラットフォームとして17年MJG株式会社(現:日本製造)設立

「AMS(Anything Manufacturing Service)」を武器にグローバル市場で新たな成長機会をつかむ

 日本製造では、このAMSを武器にグローバル市場へ本格的に参入していく方針だ。24年7月に旧社名のMJGから日本製造に社名を変更し、グループ32社を経営統合したのも、独自の技術を持つ個社のモノづくり力を有機的につなぎ、よりスピーディーに連携していくことで、AMSのグローバル展開を本格化していくという狙いがある。同時に、ブランド名も海外市場を意識した「Zo(ゾー)」を採用した。

事業承継に悩む中小企業30社超をM&Aで結集。グループ企業のそれぞれの強みを掛け合わせ世界へと挑むグローバルにも通用する“Zo”をブランド名に。「日本製造」の“造”の文字をデザイン化し、“造”とも“Zo”とも読めるようになっている

「人口減少や市場の成熟化によって国内市場の縮小が見込まれる中、新たな成長機会をつかむためにはグローバル市場への進出が不可欠です。海外の顧客もアイデアさえあれば、AMSによって工場を持っていなくても製品を形にして販売することが可能です。グループの技術力によって海外のファブレスメーカーからの高い完成品量産要望にも応えられます」と田邑社長は海外市場への戦略を語る。

 これまでつくることができなかった装置の開発やさらなる高品質、省力化などを実現するグループ企業の高度なモノづくり力は、必ずや海外市場でも大きなアドバンテージになるはずだ。

●問い合わせ先
株式会社 日本製造
https://www.zo-manufacturing.com/