“生成AIは無責任な第三者”か。リスクを理解してチャンスにつなげる生成AI時代の知的財産戦略日本弁理士会 飯塚 健 執行理事

中小企業も無縁ではない
生成AIを利用したサービスの開発

 世界では、生成AIに関連する特許の出願件数が増加している。国連機関のWIPO(世界知的所有権機関)の発表したデータによると、生成AIの特許が世界のAI関連特許に占める割合はまだ6%程度だが、出願件数は急速に増加しており、現状の生成AIの特許の4分の1以上が2023年に公開されたものだという。日本でも同様にAI関連特許の出願件数が増えている。

生成AI 分野における特許と科学出版物の件数

“生成AIは無責任な第三者”か。リスクを理解してチャンスにつなげる生成AI時代の知的財産戦略青色は生成AI特許ファミリーの件数、オレンジ色は生成AIの科学文献数
出所: WIPO (2024)「Patent Landscape Report - Generative Artificial Intelligence (GenAI)」, p.8
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 日本弁理士会の飯塚健執行理事は、生成AIの特許には二つの種類があると説明する。

「生成AIアルゴリズム自体の発明と、その生成AIアルゴリズムを利用したサービス等に関する発明です。後者で分かりやすい例を挙げると、企業のカスタマーサポート。問い合わせに対して人間の代わりに生成AIが応答するチャットボットなどのシステムに関する発明です。高度なアルゴリズムに関する発明だけでなく、そうした生成AIを活用したサービスに関する発明も増えているという印象です」

 生成AIアルゴリズム自体を開発するプレーヤーは、高度なアルゴリズムを開発できる人材と膨大な学習データ、潤沢な計算資源等を必要とするため、資金のある大企業や一部のスタートアップなどに限られる。だが生成AIアルゴリズムを利用したサービスの開発は、中小企業も無縁ではない。学習済みの生成AIをAPI等を介して利用することで、さまざまな新しいサービスを開発することができるからだ。

「そうした生成AIを利用したサービスについて開発を行う場合の注意点は、発明を見過ごしてしまうリスクがあることです。既存の生成AIを利用する場合、どうしても“既存の生成AIをある分野に適用しただけ”という意識が働くため、そこに隠れた発明を見過ごしてしまうことがあります。せっかくの発明を特許化できないと、ビジネスを有利に展開できなくなってしまいます。そうしたサービスを開発したときはぜひ知財の専門家である弁理士に相談してほしいと思います。 “発明の発掘”も弁理士の一つのスキルなのです」(飯塚執行理事)