スポンサー企業を魅了する
千葉ジェッツの独自の経営戦略とは

島田 そもそも、われわれは大型施設向けの空調や、工場の生産設備などを自動でコントロールし、快適化・効率化・省力化・省エネ化を実現する「計装」をコア技術とした総合エンジニアリング会社です。

 主力の空調計装関連事業では、空調の自動制御システムの設計から施工、保守までを一貫して行っており、国内計装業界のパイオニアとして大きな実績を積んできました。同事業は昨今、首都圏の再開発や全国各地における半導体工場の建設ラッシュなどにより、受注し切れないほど引き合いが多くなっています。

――ファクトリーオートメーション(FA)などを推進する産業システム関連事業の方も、世の中の生産性向上などに対する需要の高まりによって成長していきそうです。

島田 そうですね。われわれの事業はどれもサステナビリティ経営の実現に寄与するものですので、会社全体で規模の拡大を見込むことができます。

――にもかかわらず、どうしてスポーツチームのスポンサーに乗り出そうと思ったのですか。

島田 今までは一般消費者向けの広告宣伝を積極的に行う必要性を感じていませんでした。BtoB企業ですし、収益性の観点から、広告宣伝費はむしろ削減の対象にしていたくらいです。

 しかし、企業の社会的責任を果たすためには、収益の向上だけを目標として掲げる会社であってはいけないと思い直すようになったのです。先ほども申し上げた通り、われわれを取り巻く市場環境は良好で、24年3月期は受注高、売上高共に過去最高を更新するなど絶好調でした。ただし一方で、計装業界の人手不足はいよいよ顕著になってきています。

 そんな中で会社を持続的に成長させていくには、若い人たちに日本電技に関心を持ってもらうための工夫を、もっと戦略的に行う必要がある。人材の流出防止に向けて従業員のモチベーションを高めるべく、日本電技の魅力や存在意義を再認識できるような仕組み作りも、不可欠だと感じました。

――その糸口の一つとして見据えたのが、スポーツチームとのパートナー契約の締結だったのですね。

島田 はい。若い世代に人気のあるスポーツチームのスポンサーになれば、試合中に社名やロゴが掲出されて若年層の認知度が上がるのはもちろん、従業員にとっても得るものが多いのではないかと考えました。

 スポンサーになったチームをみんなで応援すると一体感が生まれますし、試合を観戦することで、チームワークの重要性にもあらためて気付けそうだなと。計装の現場では、日本電技の従業員同士のみならず、施工業務をサポートしてくださる協力会社との連携も欠かせないんですよね。だから、その気付きには価値があるのです。

千葉ジェッツ「完全制覇」に自信、ユニフォームパートナーが共に目指す“新時代”の成長の中身とは日本電技のロゴは、2024-25シーズンに開催されるBリーグの公式戦、天皇杯で着用するユニフォーム背面上部に掲出される

 それでいろいろなスポーツチームを候補に挙げ、たどり着いたのが千葉ジェッツさんでした。バスケットボールは30代前後を中心に人気が年々高まっていますし、千葉ジェッツさんの本拠地である千葉県船橋市が、われわれの本社がある東京都墨田区に近く、共に“地元”活性化に動けそうだったのも良いところでした。

 千葉ジェッツさんが2024-25シーズンからホームアリーナとして使用する「LaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)」や、その向かいに位置する大型商業施設「ららぽーとTOKYO-BAY」の空調の自動制御も、われわれが手掛けています。

――仕事上でも、いい巡り合わせがあったのですね。

 さらに、千葉ジェッツのスタッフの皆さんの仕事に対する向き合い方にも好感を持ちました。ホームページから突然問い合わせたにもかかわらず、迅速かつ丁寧に対応してくださったり、地域と共にクラブを成長させようという姿勢が見えたりと、共感する部分が多くありました。

田村 ありがとうございます。千葉ジェッツでは日頃から、スポーツビジネスを成り立たせるためには(1)スポンサーからの資金調達、(2)選手・チームの強化、(3)ファンの獲得の三つに、バランス良く取り組まなければならないという認識をスタッフ間で共有しています。

 すなわち、合理的な経営計画と成長目標をスポンサーに提示して活動原資を頂戴し(〈1〉)、それを強い選手の確保などのために投下して「試合に勝てるチーム」をつくる(〈2〉)。同時に、地域活性化に取り組んだり、試合会場における満足度の高い観戦体験を提供したりすることで、コアなファン層を確立し収益化する(〈3〉)。これらの施策を循環させ続けるのが大切だ、という認識です。

 その認識に基づき、スタッフが真摯に行動してくれたことで、日本電技さんとのこれだけ大きなパートナーシップにつながったのだと思うと感無量です。