技術と学術の新たな知見がイノベーションを生み、未来への扉を開く

市村清新技術財団は科学技術の研究助成などの活動とともに、技術・学術分野での重要な成果に対する顕彰として市村賞を贈呈しているが、2024年8月30日、都内において受賞記念フォーラムを開催した。ノーベル賞を受賞した吉野彰氏の基調講演に続いて、市村産業賞、市村地球環境産業賞、市村学術賞の各受賞者によるパネルディスカッションが第1部と第2部に分けて実施された。受賞内容と併せて各受賞者の声を紹介する。

リコー三愛グループ創始者の理念を継承

 日本を代表する経営者の一人である市村清氏は、リコー三愛グループの創始者として知られる。市村氏が1968年に設立したのが新技術開発財団である。2018年に市村清新技術財団と改称した後も、社会の発展や生活向上に資する活動を続けている。

 同財団が行っている事業は幅広い。中小企業向けには独創的な新技術開発への助成を行っており、大学や公的研究機関の研究者向けには、地球環境研究や植物研究への助成プログラムを運営している。また、少年少女の創造性育成事業もある。「市村アイデア賞」には毎年、全国の多数の小中学生から応募があり、ユニークなアイデアが表彰されている。

 同じく毎年授与される「市村賞」も主要事業の一つだ。24年8月には、受賞者を招いた「市村賞受賞記念フォーラム」が東京都内で開催された。最初にあいさつした同財団代表理事(会長)の中村高氏は、「創意工夫と研究開発を促進し、これを実社会に役立たせなければならない」という設立者の使命感に触れ、その志を受け継ぐ財団の「現在」とその活動について紹介した。

技術と学術の新たな知見がイノベーションを生み、未来への扉を開く市村清新技術財団
代表理事 会長
中村 高氏

 続いて行われた基調講演で、「リチウムイオン電池が拓く未来社会」のテーマでスピーチしたのは旭化成名誉フェローの吉野彰氏である。リチウムイオン電池のパイオニアとして知られる吉野氏は、01年に第33回市村産業賞を受賞。その後、19年にノーベル化学賞を受賞した。吉野氏のみならず、市村賞受賞後に国際的なアワードを授与された研究者は少なくない。

 吉野氏の講演の後、二つのパネルディスカッションが行われた。第1部では第56回(2023年度)市村産業賞および市村地球環境産業賞の4人の受賞者が登壇。続く第2部は、同じく市村学術賞受賞者4人による議論である。いずれも、サイエンスライターの竹内薫氏がモデレーターを務めた。