国債の格付けをトリプルAに
戻せる財政・経済を作る

――能力に応じての負担ということですが、具体的にはどのように進めますか。

 いわゆる年収の壁の撤廃など働き方の見直しも絡めて、負担の在り方の見直しをしていきます。2040年の人口構造予測に基づいて、高齢者についても働き方や在職老齢年金なども含めた社会保険加入の在り方を見直していきたい。予測や見通しに基づくことなく接ぎ木をするような対応をしていては、持続可能性を担保できません。

――働き方を見直し、高齢者の方も含めて働き続けることで収入を得ることができる環境を作っていかないと負担をしてもらえないということですね。

 はい。一人一人が自立し、それぞれの多様なライフスタイルを実現できる環境が必要です。

――医療費など社会保障の給付を抑制していく方策は。

 スマートウェルネスシティという取り組みがあります。132の区市町村が加わっています。一緒に歩く、ボランティア活動をする、互いにコミュニケーションを取るといった健康づくりを続ける取り組みです。取り組みの効果について科学的検証をしていますが、医療費削減の実績が出ています。こうしたエビデンスに基づいた取り組みを他の自治体にも広げていきたいと思っています。

上川陽子・外相かみかわ・ようこ/1953年生まれ。東京大学卒業後、三菱総合研究所研究員を経てハーバード大学大学院で政治行政学修士号を取得。米国上院議員の政策立案スタッフを務め、大統領選挙運動にも参加。2000年初当選。07年少子化対策担当相、08年初代の公文書管理担当相、14年以降、3度法相に就任。23年から現職。 Photo by K. A.

――防衛費、社会保障など今後、税の投入が必要になる分野があります。どのように財源を捻出しますか。

 政府は27年度までの防衛増額の財源は、歳出改革と決算剰余金、税外収入で賄ったうえで不足分を法人税、所得税、たばこ税で捻出することを決定しています。子育て、社会保障についても大幅な拡充が決まっています。その財源については民主的なプロセスを踏んで決めたことですから変更すべきではありません。

 ただ、経済を成長させ、予算のスリム化を進めることでできるだけ国民負担を減らすことは不可欠です。

――25年度にはプライマリーバランス(国と地方の基礎的財政収支)が黒字化する見通しです。財政健全化についてはどうお考えですか。

 プライマリーバランスの黒字化、黒字傾向を中長期に持続することは意識すべきです。予算をゼロベースで総点検し、実効性があり、優先度が高い施策を講じていきます。財源の確保、経済成長による税収拡大も進めます。

 財政状態は国債の格付けに影響します。日本の国債の格付けは現在シングルAプラスです。G7の中でも下位の方です。以前のようなトリプルAに戻せる財政状態、経済を作っていく必要があります。

――物価高に対しては、どのような策を講じる予定ですか。

 すでに触れたように、さらなる民間企業への賃上げ要請や最低賃金の引き上げなどを通じて、物価高を上回る賃金の引き上げ、実質賃金が恒常的にプラスになることを目指します。当面の措置として、賃上げ効果の及びにくい年金世帯や低所得世帯には給付も含めた支援を検討します。

 物価高の原因の一つである、石油・天然ガス高による電気・ガス・ガソリン価格の上昇に対しては抜本的な対策が必要です。原子力発電、再生可能エネルギー、バイオ燃料などを安全保障の面も含めて伸ばしていきます。

――日銀の金融政策の進め方についてはどうお考えですか。

 マイナス金利を解除し、政策金利を0.25%まで引き上げたことは、2%物価目標の持続的・安定的実現が見通せるようになったことを踏まえたものですから、経済が良い方向に向かっている証拠とみています。

 引き続き経済、物価、金融情勢を踏まえ、市場との対話をしっかりしていただいて物価安定目標の実現に向け、丁寧な政策運営をしてもらいたいと考えています。

――日本の競争力を高めるための産業政策は。

 令和の産業構造ビジョンを策定し、海洋環境や資源を保全しながら、持続可能な経済活動を行うブルーエコノミー、AIのような成長分野での技術革新を促進していきます。このビジョンでは、ネットワーク大国、コンテンツ・メディア大国、水・海洋立国という三つの柱を考えています。

――ネットワーク大国で目指すものは何ですか。

 インバウンド6000万人の目標に向けて地方空港の国際空港化を進め、世界各地から地方空港に直接行き来できるようにします。リニア新幹線開業の前倒しを後押しするなど高速鉄道網を充実させる一方で、地域の足となるバス、タクシーなど公共交通を支えます。

――コンテンツ・メディア大国の具体的な内容とは。

 アニメや漫画やドラマなどのコンテンツ、書籍などメディア文化、公文書やアートの保護を国家戦略の柱にし、次世代の育成にも取り組みます。

――水・海洋立国とはどういうことでしょうか。

 農林水産業の持続的成長のために、水・食糧の安全保障などの観点からも考えて水資源保護の仕組みを整備します。森林管理や総合治水対策も進めます。

――他に成長するとみている分野はありますか。

 女性の健康にかかわる産業・サービスです。人生100年の時代の100歳以上の高齢者の9割は女性です。高齢化社会では女性の健康、活躍が重要です。女性は、産後うつ、更年期、乳がんなど年齢や社会ステージによってさまざまな病気に直面します。そうした病気をテクノロジーで解決するフェムテックを推進します。

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