河野太郎・デジタル相Photo by Takayuki Miyai

自民党総裁選に立候補を表明した河野太郎デジタル相がダイヤモンド編集部の単独インタビューに応じた。河野氏は、脱原発の方針を改めるなど“現実路線”にかじを切ったようにも見える。だが、総裁選で掲げる経済政策は丸くなるどころかむしろ改革色が強まっていた。特集『自民総裁選2024 政策を問う!』の本稿では、河野氏に目玉政策である解雇規制の緩和をはじめとした労働市場改革や金融・財政政策、デジタル戦略、経済外交についても語ってもらった。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

同一労働同一賃金同一待遇を目指す!
ライドシェアを地方の賃上げの起爆剤に

――自民党総裁選挙への出馬に当たり、解雇規制の緩和に踏み込むなど大胆な政策を打ち出しています。日本経済の現状認識を教えてください。

 国民1人当たりのGDP(国内総生産)が減り、世界でも順位が落ちて先進国のレベルからこぼれ落ちそうになっています。また、企業の内部留保は600兆円まで積み上がっている。これは国内の投資機会が少ないためであり、大きな問題だと思っています。

 賃上げが継続することは大事です。しかし、大企業の正規雇用の人は春闘のベースアップで2%、3%増となってますが、約1500万人のパート、アルバイトの多くは最低賃金に近い水準になっている。派遣・契約社員400万人も含めて、より賃金の高い仕事に移れるようにすることが大事です。

――労働市場改革を含め、2021年の総裁選出馬時よりも大胆な改革を掲げたのはなぜですか。

 日本は、ややゆでガエルのような状況になっています。何となく鍋の中を泳いでいて、危なくなったから出ようよと言っても、鍋の底はもう熱くなっているからジャンプすることもためらわれるような状況だと思います。

 こうした中での総裁選で、当たり障りのないことを言っていてはダメです。(改革の)議論を避けるのではなく、はっきり主張をすることが求められています。

――解雇規制の緩和に抵抗感を覚える国民も多いはずです。雇用のセーフティーネットをどうするかも含め、労働市場改革の全体像を教えてください。

「日本では雇用が守られている」と言っても、正規雇用と非正規雇用、大企業とそれ以外とでは差があります。

 中小零細企業の従業員は、会社都合で解雇されたのに金銭の補償がなされない場合が少なくありません。(労働者が)裁判をしようにも費用がかかるし、結局、もうそれは(泣き寝入り)ということになります。

 ですから、解雇時の補償のルールがきちんとするのは、そういう人たちを救うためにも大事なのです。

 雇用の流動性の大前提は、セーフティーネットがきちんとしていることです。新しいスキルを身に付けることに集中できるセーフティーネットを整備して、学んだスキルで付加価値の高い仕事に移れるようにすることが大事です。

 労働力が不足していますから、そういう人を雇いたいという会社のニーズもあります。

しかし、現状だといったん(正社員として)雇うと未来永劫抱え込まなければいけないから躊躇(ちゅうちょ)して、ならばパートにしよう、派遣にしようとなりがちです。そうならないように、(学び直しをした)人を正規で雇えるよう、柔軟に企業が採用できる労働ルールに変えていきます。

 そうすると、会社の中で、余剰人員となっている人もセーフティーネットを利用して新しいスキルを身に付けて、付加価値の高いところへ異動したり、もっといいポジションを求めて転職したりできるのではないでしょうか。そのためにも(人材を)流動化させることが大事だと思います。

――セーフティーネットは具体的にどのように拡充しますか。

次ページでは、河野氏に、総理・総裁になって目指す、「同一労働同一賃金同一待遇」の具体的な中身やセーフティーネットの拡充策、さらには金融・財政政策、デジタル戦略、経済外交について余すところなく語ってもらった。