総理に近い自民党政治家ランキング・ベスト11【竹下登式・勤務評定で算出】石破氏5位、1位は誰?進次郎氏は何位?自民党総裁選挙の出馬会見で、政治が答えを出してこなかった問題に「決着」をつける決意を語る小泉進次郎氏(9月6日、東京都千代田区平河町で)Photo by Hirobumi Senbongi

自民党の小泉進次郎氏は9月6日、同党総裁選挙への出馬を正式に表明した。小泉氏は、本命の一人とみられているが、実は、派閥の論理で決まっていた従来の総裁選であれば“泡沫(ほうまつ)候補”扱いされていてもおかしくなかった。特集『自民総裁選2024 政策を問う!』の本稿では、今回の総裁選の特異性を明らかにするべく、竹下登元首相が政界の序列を理解するために作成していた政治家の「勤務評定表」の評価方法に基づき、同党総裁候補をランキングした。評定表で上位になったのは、重要閣僚と党三役を連続して務めてきた重鎮たちだった。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

最後のフィクサー、福本氏が絶賛した
竹下式の評価基準で首相候補の実力を格付け

 自民党の小泉進次郎氏(43歳)の総裁選出馬会見には、200人超の記者らが申し込んだが、参加者は125人に制限されて開催された。

 演説で小泉氏が強調したのが「決着」という言葉だ。すでに議論はし尽くしているものの、決められないためにたなざらしになっている改革案件は多い。そういった政治案件に決着をつけ、実行する意欲を示した。

 経済政策の「本丸」として打ち出したのが、解雇規制の緩和を含む労働市場改革だ。労働市場改革は、河野太郎デジタル相も必要性を訴えており、総裁選の論点の一つになりそうだ。

 河野氏は労働市場改革で、「同一労働同一賃金同一待遇」の理想を掲げ、それを一定の時間をかけて実現するスタンスだ(河野氏の政策の詳細は、『河野太郎・自民党総裁候補を直撃!解雇規制の緩和からデジタル戦略、経済外交まで【インタビュー完全版】』参照)。

 これに対して小泉氏は、大企業からスタートアップなどへの転職を促す政策に集中する。社員を解雇するときの要件を緩和する一方、解雇された労働者に手厚いリスキリングの機会を提供することを大企業に義務付ける。こうした改革を実現する法律を1年以内に国会に提出する「スピード感」を売りにしている。

 ところで、過去の総裁選で、小泉氏のような40代の若手が出馬する事態は珍しいことではなかった。例えば、2009年の総裁選に立候補した河野氏や西村康稔氏はいずれも46歳だった。だが、これまでのケースは、若手リーダーとして名を売るためだったり、敵対する候補の票を割るための当て馬的な役割を帯びての候補だったりと、本気で総裁の座を狙いにいく40代はまれだった。

 ところが、小泉氏は本稿執筆時の9月6日現在、決選投票に残る可能性が高い最有力候補である。人気の理由は、若く、前向きなイメージがある小泉氏を、11月にも投開票が行われる「総選挙の看板」にしたい自民党関係者が多いからだ。

 しかし、若返りは望ましいといっても、そういった目の前の選挙の思惑で総理総裁を選ぶことは結果的に、自民党のメリットになるのだろうか。

 かつて、田中角栄元首相は総理総裁の条件として、党三役(幹事長、総務会長、政調会長)のうち幹事長を含む2つのポストと、大蔵相(現財務相)、外務相、通商産業相(現経済産業相)のうち2つのポストを経験することを挙げた。

 環境相しか閣僚を経験していない小泉氏がこの条件を満たしていないことは言うまでもない。だが、実は、今回の総裁選は、主要な候補者11人(正式に出馬表明していない議員も含む)中、同条件に合致するのは1人しかいない特異な選挙なのだ。

 自民党が若返りや刷新を図ることを否定するわけではないが、旧来の価値基準にも注目に値する点はあるはずだ。

 そこで、ダイヤモンド編集部は、総理総裁の有力候補11人を、竹下登元首相が、政界の序列を把握するために作成していた政治家の「勤務評定表」の作成方法に基づき格付けした。

 竹下氏はその評定表を内閣改造などがあるごとに更新し、常に携帯していたという。

 評定表の作成を手伝ったという元産経新聞記者で、政界最後のフィクサーと呼ばれた福本邦雄氏は「総理を狙えるか。それとも、総理は狙えないか。そういうことが、表で分かるんだ。それから、各派閥の中から、次に誰が(総裁選に)出てくるかということも全部分かるんだ」と評した。

 政治家ごとの得点は、福本氏の著書『表舞台 裏舞台 福本邦雄回顧録』(講談社)を参考に、閣僚や党三役を経験した回数やそのタイミングを基に算出した。

 次ページでは、竹下式の政治家の評価を決める加点や減点の考え方の詳細と、その旧来のモノサシで測った総裁候補たちの「実力値」を明らかにする。

 ランキング上位に入ったのは、旧来の価値観では最有力候補であるはずなのに、総裁選で苦戦を強いられている政治家だが、そうした政治家にチャンスがないわけではない。なぜなら、今回の選挙は決選投票にもつれ込むとみられるが、決選投票となれば、勝ち馬に乗って主流派に食い込み、有力ポストを確保しようとする派閥の論理が復活するとみられるからだ。派閥の後押しで、逆転劇を演じる可能性を秘めているのはどの候補者なのか、データで明らかにしていく。