「長持ちする製品を作ったら、お客さまは買い替えないのではないかという意見もあります。しかし、われわれは買い替え需要を起こしたいのではなくて、アクティビティ別にアークテリクスの製品を使い分けてほしいのです。1人のユーザーがいろいろなアウトドアアクティビティを行うときの全てをサポートしたいと考えています」
プログラム自体は「赤字覚悟での取り組み」としながらも、それでも実施するのは、製品を長く使ってもらい、ブランドに受け継がれる本質に共感してもらいたいという思いからだ。
顧客体験を軸にロイヤリティを向上させていく
大型出店が続いた近年に続く展開としては、各タッチポイントでの顧客体験の質を引き上げ、ブランドへのロイヤリティの向上を目指していく。
「直営店、eコマース、取引先販売店も含めて、全てがわれわれの店舗であり、お客さまとの大切な接点です。その接点でゲストエクスペリエンスを最高のものにしていくことがわれわれの考えるブランディングです」
その一例が、グローバルとしてストアマネジャーからスタッフまで共有される「リードセルフ」と呼ばれるクレドだ。スタッフ一人一人が「より良い顧客体験を提供できるよう、自ら考え行動する」ことで、直営店というタッチポイントで、接客を通しブランドの価値を感じてもらえるよう徹底している。
また「BIRD CLUB(バードクラブ)」と呼ばれるメンバーシッププログラムでは、アクティビティごとにコミュニティーを形成し、会員イベントも積極的に行っている。アウトドアイベントやワークショップを通じて、自社製品と共に過ごす体験を提供し、顧客ロイヤリティの向上を図ることがその目的だ。
そして、人流の多い商業地区への出店が一段落した中で、25年以降はアウトドアアクティビティのフィールドに近い、山の近くなどにもブランドストアの出店を検討している。アウトドア体験を促すという意味では、ガイドと一緒に行くツアーなど、ソフト面のサービスも店舗ごとに充実させていく計画だという。
最後に高木氏はこれからのミッションをこう語る。
「ベンチャー、スタートアップの経営者の間で、バックカントリースキーやアルパインクライミングなどのエクストリームスポーツを好む人も増えてきています。しかし、これを読んだビジネスパーソンの中にはハードルが高いと感じる方も多いでしょう。今後もこれまで以上にさまざまな施策で体験機会を増やし、裾野を広げていくことも私たちの役割です」
アウトドアユーザーも、そうでない読者も、ぜひ一度、ブランドストアでアークテリクスの世界観に触れてみてはどうだろうか。