この南海トラフ地震に備えるために設置されたのが南海トラフ地震臨時情報で、運用が始まったのは19年。今回が、運用後初めての発表である。そのため国民の間に多少の混乱があった。南海トラフ地震臨時情報とは、大規模地震の発生可能性が通常と比べて高まったと評価された場合に気象庁から発表されるもので、下図のようなチャートの流れに従って発表される。日向灘の地震は、「南海トラフの想定震源域またはその周辺でマグニチュード6.8以上の地震が発生」に該当した。
南海トラフ地震臨時情報には4種のキーワードが付与されるが、防災対応を実施する必要があるのは「巨大地震警戒」と「巨大地震注意」の2種である。「巨大地震注意」では1週間「日頃からの地震への備えの再確認」と「すぐに逃げられる態勢の維持や非常持出品の常時携帯などの特別な備え」を行うことが求められる。また「巨大地震警戒」ではこの2項目に加え、地震発生後の避難では間に合わない可能性のある地域の住民は1週間の事前避難を行うことが求められる。今回出されたのは「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」であった。
「誤解されている方もいるかもしれませんが、現在の科学では大規模地震の発生時期を、精度高く予測することはできません。私たちにできるのは、日常生活や企業活動への影響を考慮しつつ、突発的に発生する地震のリスクを意識して、“より安全な防災行動”を選択すること。過去事例を見ると地震は1度では終わらず、時間差でより大規模な地震が起こる可能性があります。8月の臨時情報は、まさに時間差による大規模地震が起こる可能性を考慮したもので、鉄道や自治体の対応は適切なものであったと考えています」(磯打准教授)